【今さら聞けない】コイル(インダクタ)って、そもそもナニ?

コイル(インダクタ)とは?

コイルはインダクタとも呼ばれ、一言で言えば「電線をぐるぐる巻いたもの」で見た目もそんな感じですが、では何のために電線をぐるぐる巻くのでしょうか? その前にぐるぐる巻く前の状態で考えてみましょう。電線に電流を流すとき、電流の流れる方向を基準の軸とすると右回りに磁束が発生します。これを「右ねじの法則」と呼び、下図のようなイメージになります。

このときに発生する磁束の量はコイルを巻くことによって大きくなり、この磁束の作用を利用するのがコイルとなります。これは見方を変えると電流による電気エネルギーがコイルによって磁気エネルギーに変換されたとも言うことができます。

磁気エネルギー

このようにして発生した磁気エネルギーは流れる電流を止めてもそのまま残っており、これを「コイルが磁化された状態」と言います。つまり、電気エネルギーがコイルによって磁気エネルギーに変換され、コイルの中に蓄えられたと考えることができます。

コイルが磁気エネルギーを発生させる能力はインダクタンスと呼ばれ、一般的に巻き数を増やすとそれに比例してインダクタンスも大きくなります。また、蓄えられる磁気エネルギーの量は、このインダクタンスの値で決まります。ちなみに、電流の単位がA(アンペア)であることは良く知られていますが、インダクタンスの単位はH(ヘンリー)となっています。これらの関係を式で表すと…

磁束(Wb) = インダクタンス(H) × 電流(A)
※磁束の単位はWb(ウェーバー)と言います。

この式から、磁束の量はインダクタンスと電流に比例するということがわかります。磁束の量を増やしたかったらインダクタンスを大きくするか、もしくは流す電流を増やせば良いということになります。

コイル(インダクタ)の特性1:直流の場合

このような回路でスイッチをONするとどうなるでしょうか?コイルは直流に対してはただの電線(電気抵抗ほぼゼロ)となるので、ONしたまま放置するということは電池をショート状態で放置することになり、電池を痛めることになるので、そうならないように電流を制限する抵抗Rを入れています。

実はスイッチをONした瞬間とOFFした瞬間に奇妙な現象が発生するのです。このときの電流と電圧のグラフをご覧ください。コイルによって直流はほぼショートされるはずなので、コイル両端の電圧VLはゼロVになると思いきや・・・。実際はスイッチONのときにプラス側、スイッチOFFのときにはマイナス側に電圧が発生していますね。なぜでしょうか。

スイッチをONしたあと、電流が水平になっている部分は確かに直流と言えますが、スイッチONの直後とOFFの直後は電流が急激に変化しています。交流では電流(または電圧)の変化の傾きが急峻なほど「周波数成分が高い」とみなされるため、ONとOFFの瞬間に限っては直流ではなく「周波数の高い交流」として考えることになるのです。この部分の特性について次項でご説明します。

コイル(インダクタ)の特性2:交流の場合

コイルに急激に電流を流そうとすると、一瞬ですがその電流を減少させる方向に電圧が発生します。(前項でスイッチONしたとき)逆に急激に電流を減少(OFF)すると、これも一瞬ですが電流を増加させる方向に電圧が発生します。こうして見るとコイルって何だかアマノジャクな性格ですね。  このように、コイルは電流変化の無い直流はすんなり通しますが、電流がめまぐるしく変化する交流になると簡単には通してくれません。正確に言うと「周波数が高くなるほど通りにくい」という特性を持っています。これに対してコンデンサは「周波数が高くなるほど通す」という特性なので、コンデンサとコイルは真逆の特性になっています。

コイル(インダクタ)の種類

空芯コイル

空芯コイル

電線を円筒型に巻いたもので中は空芯となっているので空芯コイルと呼ばれます。一般的にインダクタンスは小さく、主に高周波用として用いられています。

コアコイル

フェライトなどの磁性体にコイルを巻いたもので、空芯コイルよりもインダクタンスが大きいのが特徴です。フェライトの他にモリブデンパーマロイなどが使われており、写真のようにドーナツ状のトロイダルコアに巻かれたものは、トロイダルコイルと呼ばれています。

フェライトコアのコイルはAMラジオの内蔵用アンテナとして知られています。また、小学校の理科の実験で扱われている「電磁石」もコアコイルの一種です。

コイル(インダクタ)の用途

コイルと対比されるコンデンサは、直流を通さず交流は通しやすいという性質があることから、直流分のカットやフィルタ回路などに使われています。これに対してコイルは逆に直流は通し、交流は通しにくいという性質を持っていることから以下のような用途で使われています。

交流成分のカット

カットと言っても周波数に依存し、周波数が高いほど通しにくいため、高周波ノイズの除去に有効なノイズ除去回路としても使用されています(例:電源回路のチョークコイル)

フィルタ回路

例)コンデンサと組み合わせてLPF(低域通過フィルタ)として使用

※コイルとコンデンサの組み合わせにより、HPF(高域通過フィルタ)やBPF(帯域通過フィルタ)などとしても使用されています。

フィルタ回路

電圧変換

2種類のコイルを組み合わせたもの(トランスや変圧器と呼ばれる)は交流電圧の変換回路として使用されています。 トランスは一次側と二次側の巻き数比を変えることで簡単に電圧を変換することができます。街で見かける電柱の上には高圧(6,600V)を低圧(100/200V)に変換する変圧器が載っています。また、右図のようなトランスでは二次側で複数の電圧を得ることも可能です。

電圧変換

同調回路

コンデンサのページ参照

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