【やさしい技術解説】電子負荷と回生 – その2 回生と系統

前回の記事では電子負荷装置のエネルギーの変換方式として「電気エネルギーを電気エネルギーに変換する方式」、つまりエネルギーのリサイクルを可能にする方式がある事をご紹介しました。一般にはこの様にエネルギーをリサイクルする事を「エネルギー回生」、あるは単純に「回生」と呼んでいます。

● 回生エネルギーは系統に戻して再利用

回生されたエネルギーは有効に使わなければ意味が無いのですが、それ単独で使おうとすると少々難しい事になります。多くの場合回生されるエネルギーは安定したものではありません。タイミングも量も変化します。

電子負荷装置の場合で言えば電子負荷装置の負荷が機能している時にしか回生エネルギーは発生せず、その量も動作状態に依存します。これでは安定して再利用する事は難しくなります。

このため通常電子負荷装置では回生エネルギーは一般の商用の配電線網(皆さんがいつもお使いのコンセントもこの一部です)に戻すようになっています。商用の配電線網に回生エネルギーを供給すれば、そこに繋がっているコンセントを通じ、様々な機器で有効活用されると言う寸法です。

一般に商用の配電線網を「系統」と呼び、これに発電設備を接続して運転することを「系統連系」と言います。「系統」に回生エネルギーを戻す電子負荷装置も一種の発電設備と見なせますので、系統連携による運用と言うことになります。

● 系統に戻すには国が定めたルールを守る必要有り!

実はこの系統連携は勝手に行って良いものではなく、かなり厳密に法規及びその所轄省庁からの通達により、その運用ルールが定められており、これを遵守することが求められています。とうぜん回生可能な電子負荷装置も、そのルールを満たしているかを確認した上でなければ運用できません。

これが前回の記事で上げた3つの問題の一つ、「系統連携の問題」です。

実はこのルールは保安上の規制と実施ガイドラインの2つからなります。

● ルール1 電気事業法(保安上の規制)

電気事業法とは電気事業および電気工作物の保安の確保について定められている法律です。電気事業法には系統に繋がる電気工作物の保安に関する規定があります。

一般の機器であれば電気事業法とは関係しないのですが、回生可能な電子負荷装置は非常に広義にとらえると発電設備とも考えられます。発電設備となると電気事業法の規制対象となります。

では回生可能な電子負荷装置は発電設備でしょうか?
結論から言えば、固定的に系統に接続された回生可能な電子負荷装置以外は、発電設備とはなり得ません。

コンセントから電気を取る様な電気機器はそもそも電気工作物の範疇に入らず、例え入ったとしても一般用電気工作物に分類される「小型発電設備」には含まれないからです。

 「小型発電設備」の規定
 ・太陽電池発電設備であって出力20kW未満のもの
 ・風力発電設備であって出力20kW未満のもの
 ・水力発電設備であって出力10kW未満のもの(ダムを伴うものを除く。)
 ・内燃力を原動力とする火力発電設備であって出力10kW未満のもの
 ・燃料電池発電設備(固体高分子型のものであって、最高使用圧力が0.1MPa未満のものに限る)であって
  出力10kW未満のもの

このため電気事業法による規制対象外となります。

● ルール2 電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン

昭和61年ビルなどへのコージェネレーションなどの分散電源導入の環境作りとして電気事業法に基づく「系統連系技術要件ガイドライン」が制定されました。その後平成16年に太陽光発電や風力発電導入に対応するため「系統連系技術要件ガイドライン」は廃止され「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン※」が資源エネルギー庁により設定されました。

※経済産業省 資源エネルギー庁の関係法令・ガイドラインページより上記タイトルをご確認ください。

このガイドラインは系統連携をする機器の種類によらず、遵守する必要がありますので回生可能な電子負荷装置も例外ではありません。

次回はこのガイドラインについてその詳細と、遵守ポイントについて取り上げます。

電子負荷装置と発電設備の関係は?

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