【やさしい技術解説】電子負荷の応用 – その3 電源の効率測定は定電力モードで行う

国際エネルギースタープログラムと言うものをご存じでしょうか?

国際エネルギースタープログラムは一般に「エナジースター」あるいは「エナジースター規制」とも呼ばれ、主にOA機器に対して省エネルギー化を促進する事を目的とした制度です。米国発の制度ですが日本やEUもこの制度に参加するなど国際的な制度となっています。

米国の加州の用に一定のエネルギースタープログラムの基準レベルに達し無い製品の販売を規制する国もあります。更にはOA機器のみならず一般家電の薄型TVにもこの規制を適用しようとする動きも有るようです。

この制度には詳細な基準とその値の測定に関する規定が用意されています。規定は多岐に渡り例えばモニターであれば画面サイズや解像度を基準とした、達成すべきエネルギー消費基準などが用意されています。ここでは2008年10月22日版の「Translated generalized internal power supply efficiecy test protocol r6.4.2」で規定される、AC-DC、DC-DC電源単体での評価の方法について少し取り上げます。

この規定によると試験は入力条件と出力側の負荷条件が規定されておりこれを満たした上での評価が求められています。評価の主たる要求事項は指定の入出力でのエネルギー効率が規定値以下となるか否かの判断になります。このため評価を行うには

 ・入力用電源装置、入力用測定器
 ・出力用負荷、出力負荷測定器

がそれぞれ必要になります。

出力用負荷については安いホーロー抵抗でも何でも、規定を満足できれば何でも構わない様に思えます。ただ規定には負荷を定格出力電力の20%、50%、100%の各状態として評価せよと有りますので、検査対象が一つならともかく、やはり電子負荷装置を使用するのが一般的な方法かと思います。

負荷で重要な点は要求が定格電力に対する割合で規定されている点にあります。つまり定格100Wであれば20W、50W、100Wの負荷状態で評価しなさいと要求されている訳です。しかも配線経路で発生する電力ロスについても考慮し、最終的な精度が電流値換算で±0.5%以内で設定値を維持出来る事を要求しています。

ここまで聞けば、流石にこれを受動抵抗器でやろうと言う方はいらっしゃらないかと思います。しかし電子負荷装置でも、良く考えないと一定の負荷を保つのは以外に難しいかもしれません。

定電流モードや定抵抗モードで一定の負荷条件を保てば良いのでは?と思われるかもしれませんが、要求は一定の電力負荷での評価ですから要求値に対し設定値は換算と言う作業が入る事になります。出力電圧に合わせ電流又は抵抗値を計算してやる訳ですが、問題となるのが電圧の安定度です。

出力電圧は当然負荷状態によっても変わりますので先ず出力を実測し、計算した負荷を掛け、また実測して負荷による変動分を補正する事になります。これは中々手間が掛かりまた温度などの変化などに影響を受ける場合などは安定して試験する事も困難になります。

そこでお勧めしたいのが電子負荷装置の定電力モードです。その名の通り設定一つで、所望の一定電力の負荷を安定して与える事が可能になります。当然ながら試験物の出力電圧に自動的に合わせて電流を変更してくれますので手間が掛からず、安定した試験が可能になります。

一つ気を付けて頂きたいのは配線経路上での電力ロスがどうしても大ききなる場合にはこれを加味して負荷を設定しなければ効率は悪化します。これを回避するには電子負荷装置が対象物の出力端の電圧をセンスする必要がありますので電子負荷装置にある電圧センス端子に対象物の出力端を直接結線します。

この様に便利な定電力モードでは有りますが実はこのモードを持たない電子負荷装置もまだ多く使用されています。もしかしたら今お使いの電子負荷装置にも定電力モードは無いかもしれません。一度ご確認されては如何でしょうか?

当社は業界でもいち早く定電力モードを装備した電子負荷装置を開発・販売して参りました。単体電子負荷装置(3300シリーズを除く)であればどれをお選び頂いても定電力モードを備えており安心してお選び頂けます。

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