【やさしい技術解説】パワーエレクトロニクスとエコ その2 – 安定化(レギュレーション)方式と消費電力

三端子レギュレーターはとても便利な部品ですね。例えば7805に適当に5Vより大きな直流を加えてやるとちゃんと5Vを出力してくれます。子供や学生の頃、電子工作には三端子レギュレーターが欠かせなかった思い出が有ります。

今ではほとんどの場合スイッチング電源で事足りる様になり、あまり使われなくなってきているかもしれませんが、ノイズを気にする場合はトランスに適当な平滑回路を付けその先に三端子レギュレーターを付けた電源を作ることが有るかもしれません。

三端子レギュレーターと言えば放熱フィンが付きものでしたが、なぜ大きな放熱フィンが必要になるかちゃんと説明できますでしょうか?確かにデータシートにや雑誌記事には放熱が必要と書いてありますが何故でしょうか?

下の図はごく簡単に表した三端子レギュレーターを含む回路です。三端子レギュレーターはその安定化方式からシリーズレギュレーターと呼ばれます。負荷に直列に電圧制御部が繋がれる形になるためシリーズレギュレーターと呼ばれます。

シリーズレギュレーターは降圧のみ可能な定電圧電源です。図の通り出力からのフィードバックに応じて目標電圧になるようトランジスタを抵抗として使用し電圧降下を発生させます。

当然ながら電圧降下分の電力は何処にももって行き場がありませんのでただひたすら熱に変換して大気中に放散する事になります。この電圧降下させるために必要な電力消費と、放散出来る熱量をバランスさせるため放熱フィンが必要となるわけです。

当然入力と出力の電圧差が大きいほど、また負荷電流が大きい程放散しなければならない熱が大きくなります。通常は周囲温度を考慮した上で、最大ジャンクション温度を超えない様に放熱設計をします。

この様にシリーズレギュレーターは、差分のエネルギーをひたすら熱にして消費すると言うエコとは正反対を行くような回路方式となっています。ただ簡便で有ることととリップルやノイズが少ない事などからまだまだ多くの場面で使用されています。

実はこの電圧降下分のエネルギーを消費してある目標電圧や電流に合わせる方式は電源だけでなく電子負荷装置や交流電源装置などにも応用されており、パワーエレクトロニクス業界ではまだまだ大きな位置を占めています。

これに対してもう一つの安定化方式として、効率の良さを売りにするスイッチングレギュレーション方式が有ります。パワーエレクトロニクス分野でのレギュレーション方式は概ねこのシリーズレギュレーション方式とスイッチングレギュレーション方式に大別され、それぞれの良さが生かせる分野で使用されています。

近年では効率の良さとノイズ対策などが進んだ事から、スイッチングレギュレーション方式が伸びてきているのが実情です。さらにはエコの声の高まりと共にさらにこの傾向は強まると思われます。

三端子レギュレーターを含む回路

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