【やさしい技術解説】スイッチング電源のノイズ測定は何故難しいのか? その3

測定対象の出力インピーダンスと測定器の入力インピーダンスの関係は測定結果に対して大きな影響を与えます。一般に測定器は非測定物に対して入力インピーダンスを十分高くしなければならないとされています。

ちなみにオシロスコープの一般的な入力インピーダンスをご存知でしょうか?
オシロスコープ本体は通常1MΩの入力インピーダンスを持ちます。オシロスコープ全体としては本体だけでなくプローブが付きますので、本体の入力インピーダンスとプローブのそれを合計した値になります。多くの場合使用されるプローブは10:1プローブで9MΩのインピーダンスを持ちますのでオシロスコープ全体としては合計10MΩの入力インピーダンスになります。

これは普通のスイッチング電源の出力インピーダンスに対し十分に大きな値です。出力端子からプローブを通り、オシロスコープの入力で形成される回路に流れる電流は非常に小さい値になります。負荷効果も小さくなり理想的に思えます。

しかしスイッチング電源の様な高周波成分を含むノイズ源を測定する場合には少し注意が必要です。プローブは通常20pF程度の入力容量を持ちます。このため高周波領域においてはオシロスコープの実効入力インピーダンスは著しく低下します。多くのオシロスコープ用10:1プローブでの10MΩのインピーダンスはDC~1KHz程度までであり、100MHzにおいては、80~160Ωにまで低下します。この様に入力インピーダンスの低下した状態で測定した場合、負荷効果の影響が無視できなくなります。

下の図1は前回の図をより詳細にした、スイッチング電源の各端子から見たノイズ発生源及び測定系を含む等価回路です。

スイッチング電源のFG側に現れるノイズ電圧egが十分小さい物であれば、スイッチング電源のFGを接地し、オシロスコープは10:1プローブを使用して測定する一般的な方法で問題有りませんが、大きい場合は問題が有ります。ノイズ電圧egが大きいと当然、プローブのGND線と接地されたFGで形成される回路に流れる電流が大きくなります。

この時オシロスコープので観測される電圧は、スイッチング電源の出力端のノイズ電圧に加えノイズ電圧egにより流れる電流とプローブのGND線の持つインピーダンスZcを乗じた電圧が観測される事になります。

どの程度コモンモードノイズの影響を受けているかを簡単に調べるには、プローブ先端の信号線とグランド線を実際の長さのままで短絡し、供試電源出力の片線にのみ接続して見てください。このとき観測される電圧は、無入力における値であり、コモンモードノイズ等による誤差電圧です。この影響を十分小さくしければ正確なノイズ測定は出来ません。

各端子ノイズ発生源と測定系の等価回路
図1 各端子ノイズ発生源と測定系の等価回路

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