なぜPSU(AC/DC電源)を試験するのか?

はじめに

サーバの心臓部であるPSUは、ラック内のCPUやストレージに安定した直流電圧を届けます。PSUの品質が不十分だと次のような障害が発生する可能性があります

  • 高負荷時に電圧が落ちる(処理性能低下やリセット)
  • 入力の瞬低・瞬停で停止する(サービス中断)
  • 出力にノイズが多く、誤動作や寿命低下を招く
    といったリスクが生じます。
    そこで、研究・設計段階から「入力(AC)の再現」「出力(DC)の負荷」「品質(リップル/ノイズ)」を定量的に評価できる試験システムが重要になります。

試験に必要な主要機器

  • 交流電源(交流安定化電源)
    壁コンセントの代わりに、電圧と周波数を自由に設定できる“多機能商用電源”。世界各国の条件や電圧ディップ、瞬停なども再現することができます。小容量から大容量までラインアップがあり、三相対応や多機能モデルも用意されています。
  • 直流電子負荷
    PSUの出力に接続して電流を吸い込み、実際のサーバ負荷を模擬します。定電流(CC)や定電圧(CV)、定抵抗(CR)、定電力(CP)などの動作モードがあり、ダイナミック負荷機能で過渡応答も評価可能。高速応答やゼロV近傍から線形に電流を引ける特長を持つシリーズもあります。
  • リップルノイズメータ
    PSUの直流出力に混ざるリップル/ノイズを、選択した成分だけ取り出してデジタル表示・判定できる専用計測器。オシロの読み取り個人差を抑え、検査の標準化に役立ちます。なお、電子負荷によっては、リップルノイズ測定機能をオプションとして組み込むことができます。

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  • デジタルI/Oユニット
    PS_ONなどのコントロール信号とインターフェースするために使用します。
  • D.S.O.(デジタルオシロスコープ)
    出力電圧波形などの観測用に使用します。波形判定時は自動検査プログラムの実行を一時停止し、波形の目視測定により判定します。

機器構成例

※各機器のコントロールライン(USB, GP-IB)は省略しています。+12V系統の大容量負荷として、1kW負荷×2台をマスター・スレーブ接続し、2kW負荷としています。

試験項目例

  1. 起動まわり
    • ACを印加して12VSBが規定値にあるか確認
    • PS_ONをアサートしてメイン出力ON、PWR_OKが出るまでの遅延時間を測定
    • コールドスタート時の突入挙動(入力電流・出力オーバーシュート)を観察
      → 目的:立上がりの健全性と基板側(マザーボード)が期待するシーケンス適合を確認
  2. 出力精度と負荷レギュレーション
    • 無負荷~軽負荷~定格まで直流電子負荷で段階的に電流を変え、各レール電圧の偏差を測る
      → 目的:負荷による電圧変動の範囲が規格・社内基準に収まるか
  3. クロスロード(複合負荷)
    • 例:12V重負荷で5V/3.3V軽負荷、逆パターン、総合最大近傍など代表3点
      → 目的:サーバ実使用に近いバランスでの安定性チェック
  4. 過渡応答(ステップ負荷)
    • 20%→80%などでステップを与え、ディップ/オーバーシュートと回復時間を測る
      → 目的:CPU負荷の急変などに対する応答力を把握
  5. 入力の変動耐性
    • 90~264 Vacを掃引、50/60 Hz切替、瞬低・瞬停(0.5~数サイクル)を模擬
      → 目的:商用電源事情の違いや瞬断時のふるまい(保持・再起動)を確認
      (プログラマブル交流電源は電圧・周波数可変や三相出力対応モデルが用意されています)
  6. リップル/ノイズ
    • 各レールで電子負荷内蔵リップルノイズメータにより成分別(スイッチング由来、商用成分など)を定量測定
      → 目的:ノイズ起因の誤動作や劣化を未然に防ぎ、検査合否を明確化(同一条件での自動判定にも向く)
  7. 保護機能(OCP/OPP/短絡)
    • 電流を漸増してOCPポイントを測定、自動復帰の確認
    • 短絡は安全に配慮し瞬時実施 → 電子負荷の最大電流により試験する
      → 目的:異常時でも装置・負荷双方を守れるか

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  1. ホールドアップ(保持時間)
    • フル負荷時にACを遮断し、PWR_OKのディアサートまでの時間とレール電圧降下を測る
      → 目的:停電・切替時にサーバが落ちないためのマージン確認

まとめ

  • 交流電源で「入力を再現」し、直流電子負荷で「出力を再現」、リップルノイズメータで「品質を見える化」するのがPSU評価の基本です。
  • 上のメニューを順に回せば、初心者でも「動作の正しさ→負荷変動→入力変動→ノイズ→保護→保持」の流れで抜け漏れなく試験することができます。
  • 将来の自動化や量産検査にもつながる“定量・標準化”が早い段階から実現できます。

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