IPv6って、そもそもナニ?

はじめに
インターネットに接続しているスマートフォン、パソコン、サーバー……これらが互いに通信するためには、それぞれに固有の「住所」が必要です。郵便物を届けるには宛先の住所が必要なのと、まったく同じ理屈です。
この「インターネット上の住所」のことを IPアドレス(Internet Protocol Address) と呼びます。
そして、そのIPアドレスの「書き方のルール(仕様)」には、長らく IPv4(Internet Protocol version 4) というバージョンが使われてきました。
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IPv4の「住所不足」問題
IPv4では、アドレスを 32ビットの数字で表します。たとえばこんな見た目です:
192.168.0.1
32ビットで表せるアドレスの数は、2の32乗(4,294,967,296)であり、10進数では約43億個となります。「43億もあれば十分じゃないの?」と思うかもしれません。ところが——
- 世界人口はすでに80億人を超えている
- 1人が持つデバイスはスマホ・PC・タブレット・スマートウォッチと複数台が当たり前
- 工場の機器、家電、自動車まで、あらゆる「モノ」がネットにつながる IoT時代 が到来
こうした背景から、IPv4のアドレスは 2011年ごろには事実上の枯渇を迎えてしまいました。
「住所が足りなくて、新しい住民を登録できない」状態です。
そこで生まれたのがIPv6
この住所不足を根本から解決するために設計されたのが、IPv6(Internet Protocol version 6) です。IPv6では、アドレスを 128ビットの数字で表します。見た目はこんな感じです:
2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334
少し複雑に見えますが、これには理由があります。128ビットにすることで、表現できるアドレスの数が桁違いに増えるからです。128ビットで表せるアドレスの数は、
2の128乗(340,282,366,920,938,463,463,374,607,431,768,211,456)であり、10進数では、
約340澗(かん)個
「澗」という単位、普段まず使いませんよね。ざっくり言うと、地球上の砂粒の数よりもはるかに多い数です。実質的に「枯渇することはない」と言われています。
余談:単位の漢字(千~澗)
千→万→億→兆→京(けい)→垓(がい)→杼(じょ)→穣(じょう)→溝(こう)→澗(かん)
IPv4とIPv6の違い
| 比較項目 | IPv4 | IPv6 |
| アドレスのビット数 | 32ビット | 128ビット |
| アドレスの総数 | 約43億個 | 約340澗個(事実上無限) |
| アドレスの表記 | 10進数(例:192.168.0.1) | 16進数(例:2001:0db8::1) |
| 普及開始時期 | 1980年代〜 | 2000年代〜(本格普及は2010年代以降) |
| セキュリティ機能 | オプション(IPsec) | 標準搭載(IPsec) |
| 設定の自動化 | DHCPサーバが必要 | 自動設定(SLAAC)に対応 |
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IPv6のメリットは「数」だけじゃない
アドレス数の問題を解決するだけでなく、IPv6にはいくつかの技術的な改善点も盛り込まれています。
- セキュリティが標準装備
IPv4では後付けだったIPsec(暗号化・認証の仕組み)が、IPv6では最初から組み込まれています。 - 通信の効率化
IPv6ではパケット(データのかたまり)のヘッダー構造がシンプルになり、ルーターがデータを転送する際の処理負荷が軽減されています。 - 自動設定が楽になる
IPv4では機器にIPアドレスを割り当てるためにDHCPサーバという仕組みが必要でしたが、IPv6では機器が自分でアドレスを自動生成できる仕組みが備わっています。 - IoTとの相性が抜群
センサー・カメラ・家電・産業機器など、今後ますます増え続ける「ネットにつながるモノ」すべてに個別のアドレスを割り当てられます。
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「じゃあ今すぐ全部IPv6に替えればいいじゃん」とならない理由
ここで素朴な疑問が湧きます。「それだけ優秀なら、なぜまだIPv4が使われているの?」
理由は互換性です。
IPv4とIPv6は、直接通信ができません。IPv4しか話せない機器とIPv6しか話せない機器は、そのままでは会話できないのです。
そのため、現在のインターネットでは:
- デュアルスタック:1台の機器がIPv4とIPv6の両方を同時に持つ方式
- トンネリング:IPv4のネットワーク上にIPv6の通信を包んで流す方式
- NAT64:IPv6とIPv4を相互変換する方式
といった「橋渡し」の技術を使いながら、少しずつIPv6への移行が進んでいます。
世界的に見ると、GoogleへのアクセスのうちIPv6経由は50%を超える水準(2020年代時点)に達しており、移行は着実に進んでいます。
まとめ
- IPv4:長年使われてきたIPアドレスの規格。約43億個しかなく、すでに枯渇。
- IPv6:IPv4の後継規格。約340澗個という事実上無限のアドレス数を持つ。
- IPv6はアドレス数の解決だけでなく、セキュリティ・効率・自動設定の面でも進化している。
- IPv4との互換性がないため、移行には橋渡し技術が使われながら段階的に普及が進んでいる。
IPv6は「インターネットの住所システムを、現代と未来に合わせてリニューアルした」もの——そう理解しておけば、まず十分です。今後IoTやデータセンター関連の技術に触れる機会があるとき、この知識が必ず役に立つはずです。


