フォルトライドスルーって、そもそもナニ?

はじめに

「フォルトライドスルー」という言葉、なんだか難しそうですよね。 英語で書くと Fault Ride Through(FRT)。直訳すると「故障を乗り越えて走り続ける」という意味です。

この言葉、実は太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの世界でとても重要なキーワードになっています。今回はこの「フォルトライドスルー」について、できるだけわかりやすく解説していきます。

電力系統とは?

話を理解するために、まず電力系統(でんりょくけいとう)というものを頭に入れておきましょう。電力系統とは、発電所から家庭や工場へ電気を届けるための「電気の高速道路」のようなものです。発電所・変電所・送電線・配電線が複雑につながって、日本全国に電気を運んでいます。

この「電気の高速道路」、普段は何事もなく電気を運んでいますが、たまにトラブルが起きることがあります。

系統トラブルとは?

たとえば、こんなことが起きると系統に「トラブル」が発生します。

  • 雷が送電線に落ちた
  • 台風で電柱が倒れた
  • 鳥が変電所の機器に接触した

こうした故障が起きると、電圧がぐっと下がったり(電圧低下)、最悪の場合は一時的に電気が流れなくなったりします。この「電圧がぐっと下がる現象」を電圧ディップ(または瞬時電圧低下)と呼びます。時間にして数十ミリ秒〜数秒という、ほんの一瞬の出来事です。

昔の発電所は「切り離せばOK」だった

従来の火力発電所や水力発電所は、系統に故障が起きたとき「とにかく安全に止まって切り離される」ように設計されていました。発電所の台数が限られていた時代は、それでも何とかなっていたのです。

でも今は事情が違います。

再生可能エネルギーが増えた結果・・・

太陽光パネルや風力発電機が、全国各地にたくさん設置されるようになりました。これはとても良いことなのですが、新たな問題も生まれました。

もし、系統トラブルのたびに太陽光・風力発電がいっせいに切り離されたら?

🌞🌞🌞 → ⚡系統トラブル → 全部ストップ!

大量の電源が一瞬でゼロになってしまいます。これは停電や周波数崩壊(電力系統のバランスが崩れる大事故)につながる、とても危険な状態です。

そこで登場!「フォルトライドスルー」

フォルトライドスルーとは、一言で言うと

「系統で故障が起きて電圧が下がっても、発電を止めずに踏ん張り続ける能力」

のことです。

「ライドスルー」=「乗り越える」というイメージ通り、嵐の中でも船が航行し続けるように、ちょっとやそっとの故障では発電をやめないという考え方です。

もう少し具体的に説明すると

フォルトライドスルーには、主に2つの側面があります。

  • つながり続ける(切り離されない)
    電圧が低下しても、系統から切り離されずに接続を維持します。
    「どれくらいの電圧低下まで耐えられるか」「何秒間耐えられるか」は、各国のルール(グリッドコード)で定められています。
  • 積極的にサポートする(無効電力注入)
    ただ「耐える」だけじゃありません。 故障中は系統の電圧が弱っているので、発電機側から無効電力(むこうでんりょく)というものを積極的に送り込んで、電圧の回復を助けます。
    ちょっと難しい話になりましたが、「電圧が下がったとき、むしろ助けに行く」というイメージです。

LVRTとは

フォルトライドスルーの中でも、特に電圧が低下したときに耐えることを

LVRTLow Voltage Ride Through)=低電圧ライドスルー

と呼びます。これが最もよく使われる言葉です。また、電圧が異常に高くなったときに耐える HVRTHigh Voltage Ride Through もあります。

日本では・・・

日本でも再生可能エネルギーの普及が進む中、電力系統を安定させるために、発電事業者に対してフォルトライドスルー能力を持つことが求められるようになってきています。

系統接続のルール(連系技術要件)の中に盛り込まれており、新しく建設される太陽光・風力発電所はこの基準をクリアする必要があります。

まとめ

言葉意味
フォルトライドスルー (FRT)系統故障が起きても発電を止めず耐え続ける能力
電圧ディップ故障による一時的な電圧低下
LVRT低電圧時に耐える能力(FRTの代表例)
無効電力注入電圧回復を助けるサポート動作

おわりに

「フォルトライドスルー」、難しそうな名前ですが、要するに「ちょっとくらいトラブルがあっても、踏ん張って電力系統を支え続ける」という考え方です。再生可能エネルギーが電力の主役になっていく時代、こうした地味だけど重要な技術が、私たちの暮らしの安定を陰で支えています。電気のニュースを見るとき、ぜひこの言葉を思い出してみてください。