電流検出って、そもそもナニ?

はじめに

電気回路を流れる電流を測定することは、電子機器の設計や保守において非常に重要です。しかし、電流は直接「見る」ことができません。そこで、さまざまな方法で電流を検出する技術が開発されてきました。今回は、代表的な3つの電流検出方法について、初心者の方にもわかりやすく解説します。

シャント抵抗:もっともシンプルな方法

基本原理

シャント抵抗方式は、最もシンプルで古典的な電流検出方法です。「シャント(shunt)」とは「分流」を意味し、測定したい回路に小さな抵抗を直列に挿入して電流を測定します。

原理は非常にシンプルで、中学校の理科で習うオームの法則を利用します。

V = I × R  (電圧 = 電流 × 抵抗)

これを変形すると、

I = V / R  (電流 = 電圧 / 抵抗)

つまり、既知の抵抗値(R)を持つ抵抗器に流れる電流によって発生する電圧(V)を測定すれば、電流(I)を計算できるのです。

具体例

例えば、0.01Ω(オーム)のシャント抵抗に10Aの電流が流れたとします。

V = 10A × 0.01Ω = 0.1V

このように、0.1Vの電圧降下が発生するので、この電圧を測定すれば電流がわかります。

メリット

  • 構造がシンプル:ただの抵抗なので、理解しやすく実装も簡単
  • 低コスト:部品代が安く済む
  • 高精度:抵抗値が正確であれば、測定精度も高い
  • 周波数特性が良い:直流から高周波まで幅広く対応可能

デメリット

  • 電力損失:抵抗で発熱するため、エネルギーのロスが発生
  • 回路への影響:回路に直列に挿入するため、回路を切断する必要がある
  • 電圧降下:測定のために電圧が下がってしまう
  • 大電流測定の困難さ:大電流を測定する場合、発熱が大きくなる

適している用途

電源回路の電流監視、バッテリー充放電の管理、モーター制御など、比較的小〜中電流の測定に広く使われています。

ホール素子方式:磁気を利用した非接触測定

基本原理

ホール素子は、ホール効果という物理現象を利用した電流検出方法です。1879年にエドウィン・ホールによって発見されたこの効果は、磁界の中を電流が流れると、電流と磁界の両方に垂直な方向に電圧が発生するというものです。

電流が流れる導線の周りには磁界が発生します。この磁界をホール素子で検出すれば、導線を切断することなく電流を測定できるのです。

構造

典型的なホール式電流センサーは以下のような構造になっています:

  1. 導線:測定したい電流が流れる
  2. 磁気コア:導線の周りの磁界を集める環状の鉄心
  3. ホール素子:磁気コアのギャップ部分に配置され、磁界を検出
  4. 信号処理回路:ホール素子の出力を増幅・線形化

メリット

  • 非接触測定:導線を切断する必要がない
  • 電気的絶縁:測定回路と被測定回路が電気的に分離されている
  • 直流・交流両対応:直流から交流まで測定可能
  • 電力損失なし:測定対象回路での発熱がない

デメリット

  • オフセット誤差:温度変化などによる誤差が発生しやすい
  • 外部磁界の影響:周囲の磁界の影響を受けやすい
  • コスト:シャント抵抗に比べると高価
  • 応答速度:シャント抵抗方式に比べるとやや遅い

適している用途

インバーター制御、電気自動車のバッテリー管理、産業用機器の電流監視など、絶縁が必要な場合や非接触で測定したい場合に適しています。

Rogowski(ロゴスキー)コイル:交流専用の高性能センサー

基本原理

Rogowskiコイルは、電磁誘導の法則を利用した電流測定方法です。コイルを導線の周りに巻くと、電流の変化によってコイルに電圧が誘導されます。この誘導電圧は電流の変化率に比例するため、これを積分することで電流を求めることができます。

Rogowskiコイルの特徴は、鉄心を使わない空芯コイルであることです。導線の周りにぐるりと巻いたコイルが、電流の変化による磁界の変化を検出します。

構造の特徴

  • 柔軟なコイル:フレキシブルなコイルで、測定したい導線に巻き付けるだけ
  • 空芯構造:鉄心がないため、磁気飽和が起こらない
  • 戻り線構造:ノイズを低減するため、コイルが往復する構造になっている

メリット

  • 広いダイナミックレンジ:数アンペアから数十万アンペアまで測定可能
  • 磁気飽和がない:鉄心を使わないため、大電流でも飽和しない
  • 高周波特性が優秀:高速な電流変化にも追従可能
  • 設置が簡単:既設の導線に後から取り付けられる
  • 軽量・コンパクト:同じ電流容量のCT(変流器)に比べて軽い

デメリット

  • 直流測定不可:電流の変化を検出するため、直流は測定できない
  • 積分回路が必要:誘導電圧を積分する電子回路が必須
  • 低周波での精度低下:非常に低い周波数では精度が落ちる
  • 外部磁界の影響:鉄心による磁気シールドがないため、外部磁界の影響を受ける可能性

適している用途

高電圧・大電流の測定、電力系統の保護リレー、溶接機の電流測定、パルス電流の測定など、特に高速で変化する大電流の測定に威力を発揮します。

3つの方式の比較表

項目シャント抵抗ホール素子Rogowskiコイル
測定方式接触式非接触式非接触式
直流測定×
交流測定
電気的絶縁×
測定範囲小〜中電流小〜大電流中〜超大電流
精度高い中程度中〜高い
コスト低い中程度高い
設置の容易さ回路切断必要比較的容易非常に容易

まとめ:用途に応じた使い分けが重要

電流検出には「これが最高」という方法はありません。それぞれの特徴を理解し、用途に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。

  • コストと精度を重視し、比較的小さな電流を測定するなら→シャント抵抗
  • 絶縁が必要で、直流も含めて幅広く測定するなら→ホール素子
  • 大電流や高速変化する交流を測定するなら→Rogowskiコイル

現代の電子機器では、これらの技術が組み合わせて使われることも多く、それぞれの長所を活かした設計が行われています。電流検出技術は、安全で効率的な電気利用の基盤となる、縁の下の力持ちなのです。