パワエレ試験サイト契約のサクセスストーリー

電源メーカ開発担当の西郷さんは大容量の新機種開発を担当していました。彼は優れた技術者であるものの、新製品の試験設備構築には頭を悩ませていました。今回は、試験サイト貸し出しサービスを巡るサクセスストーリーをご紹介します。

暗礁

新製品は、これまでにない大容量の双方向コンバータだった。起動突入や過渡応答、耐久を含む長時間の負荷試験——必要なのは大電力の受電・保護設備、重量物を載せられる床、そして多様な計測器。だが社内の試験室は100 kVAの受電が限界、電子負荷も足りない。設備更新の稟議は「費用と工期が合わない」と差し戻しになり、西郷さんは図面を見ながらため息をついた。

1通のメール

そんなとき、社外展示会で名刺交換をしたKGの営業、坂本さんからメールが届く。 「パワエレ向けの“試験サイト”をスポットでお使いになりませんか?」 訪問当日、坂本さんは施設の概要を示すパンフレットを広げた。 「最大300 kVAまで対応できる受電設備、約500種類の計測器、最大4.2トンの試験体まで搬入可能です。日吉・新川崎・武蔵小杉など東京近郊でご利用いただけます」 西郷さんの目が輝いた。社内では到底まかなえない環境だ。実際に調べると、KGの公式案内にも同様の設備・ロケーションが示されていた。さらに、スポット利用を想定した貸出サービスとして公開されている。これなら、開発ピークだけ外部を使う現実的な道が見える。

「社内でやれ」という壁

しかし上司は渋い顔をした。 「試験は社内でやるのが原則だ。機密もある」 ——予想どおりの反応だ。だが、西郷さんは引かない。反対される理由を分解した。

  • 機密流出が怖い
  • コストが読めない
  • スケジュールの主導権を失う不安

反論ではなく設計で解法を導くことにした西郷さんは坂本さんと連携し、上司の不安を「設計項目」に落としこんだ提案書をつくった。

  1. セキュリティ設計
    • 試験サイト側の立入・撮影ルール、個別秘密保持契約(NDA)の締結。
    • 機器のカバリングと、試験データの持ち出し条件を明文化。
    • 社内から同行者をアサインし、作業ログを残す。
  2. コスト設計
    • 社内設備更新(受電工事・床補強・計測器調達)の概算と、外部サイトのスポット利用費を比較。更新案は初期費用が重く、外部は変動費で開発ピークだけ払う構造。
    • 長期的には両者の損益分岐点を試算し、「今回の新機種は外部、次期は社内強化」というロードマップを提示。
  3. スケジュール設計
    • 必要機材の「予約表」を先に確保。万が一の機材未手配に備え、代替計測器リストと試験手順の分岐(A/B手順)を準備。
    • 設営→通電→本試験→撤収までのクリティカルパスと、メンテナンスウィンドウを定義。

    補足で、KGの別資料をあたると、同社は電源検査システムや自動検査ソフトの提供実績があり、パワエレ計測分野での知見が厚いことが分かった。

    小さく始めて大きく学ぶ

    提案の肝は「パイロット」だった。いきなり全試験を外部でやらず、1日だけの接続・安全確認と計測器の相性評価を実施する。 当日。サイトの床に固定された架台に、新機種のパワーモジュールが載る。受電は余裕の容量、計測器は事前予約どおりに整然と並ぶ。配線の取り回し、保護協調、冷却。社内では停滞していた作業が、次々と片付いていく。 試運転の波形を見た上司が言った。 「雑音の底、社内で見ていたのと違うな」 高帯域の電流プローブで拾った立ち上がりのリンギングが、対策の核心を示していた。現場で治具を微修正し、再測定。数値は仕様範囲に収まった。

    反対から支援へ

    パイロットの結果をもとに、正式な試験計画が承認された。坂本さんは、長時間の熱安定化に向けて夜間枠のスケジュールも押さえてくれた。重量治具の搬出入も現場スタッフと段取り済みだ。スポット利用の「外部チーム」が、いつの間にか西郷さんの開発チームの延長線になっていた。 実際、パワエレ向けの高電力・重量物・多機材をワンストップで提供する取り組みは、他社のレンタルラボ領域でも見られ、専門スタッフの常駐や見積り一本化などの運用メリットが報告されている。西郷さんは「外部を賢く組み合わせる」時代を実感した。

    リリース前夜

    本試験は、計画どおりに進んだ。300 kVA級の負荷変動、温度プロファイル、連続耐久。要所で波形を取り、データはその場で成績書のフォーマットに落とし込む。バグは現場でつぶし、仕様の裏付けを取る。終わったとき、上司は静かに言った。

    「社内にこだわっていたのは、品質への責任感だった。だが、君は責任の取り方を広げたな」

    そして発売へ

    量産判定会議。試験記録は、外部サイトの作業ログや立会い記録と一体で綴じられている。質疑はあったが、すべて数値と根拠で返せた。承認の印が押される。新機種は予定どおり市場へ出た。 発売日の夕方、西郷さんは坂本さんに電話した。

    西郷 「今回の成功は、現場を“見える化”できたことが大きかったです」

    坂本 「次はさらに大きい機種ですよね。設備も機材も、必要なときに必要なだけ。一緒に進めましょう」

    エピローグ:原則を守り、方法を変える

    「試験は社内で実施すべき」という原則は、品質と機密を守るためにある。その志を守りつつ、外部の力で「方法」を広げたのが今回のプロジェクトだ。セキュリティ・コスト・スケジュールを設計し直し、パイロットで検証し、現場とチームをつないだとき、開発は前に進む。 大電力、重量物、多様な計測。ハードルが高いほど、解は現場にある。次の挑戦も、現場から始めよう。

    注)
    本ストーリーはフィクションですが、設備仕様や提供形態の一部は公開情報をもとに構成しています。設備の最大対応やロケーション等の具体値は、以下のページを参考にしてください。

    汎用サムネイル
    パワエレ試験サイト貸出

    「パワエレ試験サイト貸出サービス」では、最大300 kVA対応の大電力設備・約500種類の計測器・最大4.2tの試験体対応を備えた設備を、東京近郊(日吉・新川崎・武蔵小杉等)で利用可能です。試験スペースや機器にお困りの方に最適です。