現場でのノイズ対策ノウハウ

はじめに
工場などの現場では「ノイズ」が原因となって様々な障害が発生することがあります。今回は、このようなノイズの対策方法がテーマです。
ノイズの種類
工場における「ノイズ」とは、主に電気的な「雑音(不要な信号)」を指します。主な種類は以下の通りです。
ノイズの種類 | 概要 |
伝導ノイズ | 電源線や信号線を介して、機器から機器へ伝わるノイズ。主にケーブルに流れる。 |
放射ノイズ | 空間を通って電磁波として伝わるノイズ。隣接機器に影響する。 |
インパルスノイズ | 突発的な大きなエネルギー(雷、モーターの起動・停止など)によるノイズ。 |
低周波ノイズ | 50Hz/60Hzの電源周波数やその倍数(高調波)によるノイズ。 |
高周波ノイズ | 数kHz〜GHzの周波数をもつノイズ。インバータ、無線通信機器などが発生源。 |
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障害の種類
ノイズによって引き起こされる代表的な障害は以下の通りです。
障害の種類 | 概要 |
誤動作 | センサーやコントローラが間違った信号を感知・出力する。 |
通信障害 | ネットワーク、シリアル通信、Ethernetなどが不安定になったり、データが欠落する。 |
機器の損傷 | 強い雷サージやスイッチングノイズで部品が破損。 |
測定値の誤差 | 計測器や制御盤の計測値がノイズによって乱れる。 |
動作停止 | 機器が安全装置(インターロック等)で意図せず停止することがある。 |
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ノイズ対策に必要なツール(測定器)
ノイズ対策を行うためには「発生源」「伝播経路」「影響先」を特定することが重要です。そのために以下の測定器が使われます。
測定器の名称 | 用途 |
オシロスコープ(携帯型も有り) | 電圧、パルス状ノイズの波形観測。 |
スペクトラムアナライザ(スペアナ) | ノイズの周波数成分の分析。 |
ノイズメータ | 特定の規格(V/m、dBなど)でのノイズ計測。 |
絶縁抵抗計(メガー) | 絶縁劣化がノイズの原因か確認。 |
EMC用検知アンテナ | 空間ノイズ(放射ノイズ)の検出。 |
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効果的な対策方法
発生源の抑制
- 電源ノイズフィルタを機器の電源ラインに入れる(フィルタ回路)。
- 接地(アース)を適切にする。浮いたアースや共通アースは避ける。
- モーターやインバータのノイズ抑制部品(ノイズフィルタやスナバ回路)を追加。
伝搬経路の対策
- 信号・電源ケーブルをシールド線にする。
- ノイズ源と信号ケーブルは物理的に距離をとる(配線ダクトを分ける)。
- ケーブルはできるだけ短く、束ねて配線しない。
- アースの取り方を「一点アース」にすることでループを避ける。
- 鉄箱や金属ダクト(シールド)に制御機器を収納する。
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影響先の耐ノイズ強化
- ノイズ耐性の高い機器を選定。
- サージ保護素子(SPD、バリスタ)を通信・電源ラインに設置。
- 適切なコモンモードチョークを挿入。
ノイズ対策の基本
- ノイズの可視化(測定)
- 発生源の特定
- 対策は3段階 発生源 → 伝搬経路 → 影響先
※ノイズ対策の基本は、最初に元(発生源)を断つということですね。
まとめ
- ノイズと障害のタイプを理解し、
- 測定器で現状把握し、
- 発生源、伝播経路、影響先の3段階で対策を打つ
このポイントを押さえると、現場でのノイズ問題は効果的に対策することができます。
関連情報
RM-104
リップルノイズメータ
2018-12-28