半導体のON抵抗って、そもそもナニ?

はじめに
スマートフォンやパソコン、電気自動車など、私たちの身の回りにある電子機器の中では、無数の半導体が働いています。その中でも「パワー半導体」と呼ばれる部品には、「オン抵抗」とい
う重要な特性があります。
でも、「オン抵抗」って一体何でしょう?今回は、この少し専門的に聞こえる言葉を、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
スイッチとしての半導体
まず、パワー半導体が何をしているのか理解しましょう。
パワー半導体(MOSFETやIGBTなど)は、簡単に言えば電気のスイッチです。ただし、壁についている照明のスイッチとは違い、電子的に超高速でON/OFFを切り替えられる優れものです。
- OFFの状態:電気を流さない(絶縁状態)
- ONの状態:電気を流す(導通状態)
このスイッチ機能によって、電力を効率よく制御したり、電圧を変換したりしています。
「ON抵抗」の正体
ここで本題です。理想的なスイッチなら、ONにしたときは「完全に電気を通す」はずですよね。水道で例えるなら、蛇口を全開にしたら、水が何の抵抗もなく流れるイメージです。
しかし、現実の半導体スイッチは違います。
ONの状態でも、わずかに抵抗が残っているのです。この抵抗が「オン抵抗(ON-Resistance)」です。
記号では「Ron」や「RDS(on)」と表記されることが多く、単位は「Ω(オーム)」や「mΩ(ミリオーム)」です。
なぜON抵抗が問題なのか?
「ちょっとくらい抵抗があっても、電気は流れるんだからいいじゃない?」と思うかもしれません。でも、この「ちょっとした抵抗」が、実は大きな問題を引き起こすのです。
問題①:電力の損失(発熱)
オン抵抗があると、そこで電力が失われます。これはオームの法則から計算できます:
損失電力 = I² × Ron
ここで、Iは流れる電流です。
例えば:
- オン抵抗が10mΩ(0.01Ω)
- 流れる電流が10A
このとき、損失電力は: 10² × 0.01 = 1W(ワット)
たった1Wと思うかもしれませんが、これが熱として放出されます。小さな半導体チップにとって、1Wの発熱は無視できません。
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問題②:効率の低下
電力が熱として失われるということは、その分だけエネルギー効率が下がるということです。
例えば、電気自動車のモーター制御では、数百アンペアの電流が流れることもあります。もしオン抵抗が大きければ:
- バッテリーの電力が無駄に消費される
- 走行距離が短くなる
- 冷却システムが大きく重くなる
ON抵抗を小さくする工夫
だからこそ、半導体メーカーは「いかにオン抵抗を小さくするか」に日夜取り組んでいるのです。
- チップサイズを大きくする
オン抵抗は、半導体チップの面積に反比例します。チップを大きくすれば、電気の通り道が広くなり、抵抗が下がります。
ただし、チップが大きいと:- コストが上がる
- 実装スペースが必要になる
というトレードオフがあります。
- 新しい材料を使う
従来のシリコン(Si)に代わって、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった新材料が注目されています。
これらは:- シリコンより電気特性が優れている
- 同じサイズでもオン抵抗が小さい
- 高温でも動作できる
特に電気自動車やデータセンターの電源など、高効率が求められる分野で急速に普及しています。
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- 並列接続
複数の半導体を並列につなぐことで、全体としてのオン抵抗を下げる方法もあります。抵抗の並列接続では、合成抵抗が小さくなるからです。
ON抵抗の具体的な数値感
実際の製品では、どのくらいの値なのでしょうか?
低電圧用MOSFET(~100V級)
- 1~10mΩ程度
- スマホの電源回路などに使用
高電圧用MOSFET(~600V級)
- 50~500mΩ程度
- 家電製品やACアダプターに使用
SiC-MOSFET(~1200V級)
- 10~100mΩ程度
- 電気自動車や太陽光発電に使用
数値を見ると、mΩ(ミリオーム)という小さな単位で議論されていることがわかります。たった数mΩの違いが、製品の性能を大きく左右するのです。
データシートでの確認
実際に半導体を選ぶときは、メーカーが提供するデータシートを見ます。
オン抵抗は通常:
「RDS(on)」という項目に記載
条件(電流値、温度、ゲート電圧など)も併記
グラフで温度依存性が示される
注意点: オン抵抗は温度が上がると増加します。データシートには25℃での値が記載されていますが、実動作では温度上昇を考慮する必要があります。
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まとめ
オン抵抗とは:
- 半導体スイッチがONのときに残る抵抗
- 小さいほど良い(損失が少ない)
- 電力損失と発熱の原因になる
- 製品の効率を左右する重要パラメータ
一見地味な「抵抗の値」ですが、私たちのスマホのバッテリー持続時間、電気自動車の航続距離、データセンターの電気代など、身近なところに影響しています。
半導体技術の進歩は、この「オン抵抗を小さくする戦い」の歴史でもあるのです。次に電子機器を使うとき、その中で働く無数の半導体たちが、いかに効率よく電気を流そうと頑張っているか、少し思い出してみてください。
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