耐電圧試験器:トランス式とパワーアンプ式の違いとは?
はじめに
電気製品の安全性を確認するために欠かせない「耐電圧試験」。この試験に使われる試験器には、大きく分けて「トランス式」と「パワーアンプ式」の2つのタイプがあります。一見同じように見えるこれらの試験器ですが、内部の仕組みや性能には大きな違いがあります。
今回は、特に「出力電圧の安定度」に注目しながら、両者の違いをわかりやすく解説していきます。
耐電圧試験とは?
本題に入る前に、耐電圧試験について簡単におさらいしましょう。
耐電圧試験は、電気製品の絶縁部分に規定の高電圧を一定時間加え、絶縁が破壊されないかを確認する試験です。例えば、家電製品の電源部分と金属筐体の間に異常な電流が流れないかをチェックします。
この試験では、通常使用時よりもはるかに高い電圧(数百V~数千V)をかけるため、専用の試験器が必要になります。
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トランス式耐電圧試験器
仕組み
トランス式は、最も伝統的な方式です。その名の通り、トランス(変圧器)を使って電圧を昇圧します。
仕組みはシンプルで:
- 商用電源(100V/200V)を入力
- トランスで高電圧に昇圧
- 試験対象に出力
という流れになります。
特徴
メリット:
- 構造がシンプルで故障しにくい
- 大容量の出力が得やすい
- 比較的低コスト
- 瞬間的な大電流にも対応できる
デメリット:
- 本体が重く、大きい
- 出力電圧の安定度が負荷の影響を受けやすい
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パワーアンプ式耐電圧試験器
仕組み
パワーアンプ式は、電子回路(パワーアンプ)を使って電圧を制御する現代的な方式です。
基本的な流れは:
- 低電圧の信号を生成
- パワーアンプで増幅
- トランスでさらに昇圧(小型のものを使用)
- 精密な制御回路でフィードバック制御
特徴
メリット:
- 出力電圧の安定度が非常に高い
- 小型・軽量化が可能
- 出力波形の品質が良い
- 精密な制御が可能
デメリット:
- トランス式より高価
- 電子回路が複雑
- 瞬間的な過負荷に弱い場合がある
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最大の違い:出力電圧安定度
両者の最も重要な違いが、出力電圧の安定度です。
トランス式の電圧安定度
トランス式は、負荷(試験対象)によって出力電圧が変動しやすいという特性があります。
なぜ変動するのか?
トランスには「内部抵抗」があります。負荷が重くなる(電流が多く流れる)と、この内部抵抗による電圧降下が大きくなります。これは、水道のホースを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。蛇口を全開にしても、ホースが細いと先端での水圧は下がってしまいます。
具体例:
- 無負荷時:設定3000V → 出力3000V
- 負荷時:設定3000V → 出力2800V(200V低下)
このような変動は、試験結果の精度に影響を与える可能性があります。
パワーアンプ式の電圧安定度
一方、パワーアンプ式はフィードバック制御により、負荷が変動しても出力電圧をほぼ一定に保つことができます。
フィードバック制御とは?
出力電圧を常に監視し、設定値より下がったら自動的に補正する仕組みです。車の速度を一定に保つクルーズコントロールと同じ原理です。
合わせて読みたい:フィードバック制御って、そもそもナニ?
(作成予定)
具体例:
- 無負荷時:設定3000V → 出力3000V
- 負荷時:設定3000V → 出力2995V(5V以内の変動)
電圧安定度の比較表
| 項目 | トランス式 | パワーアンプ式 |
| 電圧変動率 | 5~10%程度 | 1%以内 |
| 応答速度 | 遅い | 速い |
| 負荷依存性 | 大きい | 小さい |
| 波形歪み | やや大きい | 小さい |
どちらを選ぶべきか?
トランス式が向いている場合
- 大容量の試験が必要:大型モーターや変圧器など
- コストを抑えたい:予算が限られている
- シンプルな構造が好ましい:メンテナンスを簡単にしたい
- 瞬間的な大電流が流れる可能性:コンデンサを含む回路など
パワーアンプ式が向いている場合
- 高精度な試験が必要:医療機器や精密機器
- 試験結果の再現性重視:同じ条件での繰り返し試験
- 省スペースが求められる:設置場所が限られている
- 負荷変動が大きい試験:複数の製品を連続して試験
その他の違い
出力波形
トランス式: 正弦波ですが、負荷によって波形が歪むことがあります。
パワーアンプ式: 制御回路により、きれいな正弦波を維持できます。
周波数
トランス式: 商用電源周波数(50Hz/60Hz)に依存します。
パワーアンプ式: 周波数を可変できる機種もあり、特殊な試験に対応可能です。
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応答時間
トランス式: 負荷変動への応答が遅く、電圧が安定するまで時間がかかります。
パワーアンプ式: 瞬時に電圧を補正できるため、試験時間の短縮につながります。
まとめ
トランス式とパワーアンプ式、それぞれに長所と短所があります。
トランス式は、シンプルで堅牢、大容量対応が可能という「力強さ」が魅力です。一方で、出力電圧が負荷によって変動しやすいという弱点があります。
パワーアンプ式は、高度な制御技術により出力電圧の安定度が高く、精密な試験に適しています。ただし、構造が複雑でコストが高いという面もあります。
どちらを選ぶかは、試験対象、求められる精度、予算、設置環境などを総合的に考慮して決定することが重要です。近年は、技術の進歩によりパワーアンプ式のコストも下がってきており、高精度を求める用途では主流になりつつあります。
自社の試験ニーズに最適な試験器を選ぶことで、より確実な品質保証が実現できるでしょう。
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