ヒートシンクって、そもそもナニ?

はじめに
スマートフォンを長時間使っていたり、ノートパソコンで重い作業をしていると、本体が熱くなった経験はありませんか? これは電子部品が働くときに、必ず「熱」が発生するからです。
特にパワーエレクトロニクス(パワエレ)機器——つまり、電力を変換したり制御したりする装置——では、大きな電流が流れるため、たくさんの熱が発生します。この熱をうまく逃がさないと、部品が壊れてしまうのです。
そこで登場するのがヒートシンクです。
ヒートシンクって何?
ヒートシンクを日本語にすると「放熱器」。文字通り、熱を逃がすための部品です。
見た目は、金属の板にたくさんの「ヒレ」や「フィン」がついた形をしています。よく見かけるのは、パソコンのCPUクーラーや、LEDライトの裏側、インバーターなどの電力変換装置です。
なぜヒレがたくさんついているの?
答えは簡単。「表面積を増やすため」です。熱は物体の表面から空気中に逃げていきます。表面積が大きければ大きいほど、たくさんの熱を逃がせるというわけです。
熱はどうやって逃げていくの?基本原理を理解しよう
熱が移動する方法には、主に3つあります。
- 伝導(でんどう)
固体の中を熱が伝わっていく現象です。フライパンの取っ手が熱くなるのがこれ。
ヒートシンクでは、発熱する電子部品からヒートシンクへ熱が伝わります。このとき、熱伝導率が高い材料(アルミニウムや銅)を使うことが重要です。 - 対流(たいりゅう)
空気や液体が動くことで熱を運ぶ現象です。
ヒートシンクのフィンに温められた空気が上昇し、新しい冷たい空気が入ってくることで、どんどん熱を奪っていきます。これを「自然対流」といいます。ファンで強制的に空気を送る場合は「強制対流」です。 - 放射(ほうしゃ)
物体が電磁波として熱を放出する現象です。焚き火の前で手をかざすと暖かいのは、この放射によるもの。
ただし、ヒートシンクでは伝導と対流が主役で、放射の効果は比較的小さいです。
ヒートシンクの材料:なぜアルミや銅なの?
ヒートシンクによく使われる材料は:
- アルミニウム:軽くて加工しやすく、コストも手頃。熱伝導率もそこそこ良い(約200 W/m・K)
- 銅:熱伝導率が非常に高い(約400 W/m・K)が、重くて高価
多くの場合、バランスの良いアルミニウムが選ばれます。高性能が必要な場合は銅製や、銅とアルミの複合タイプも使われます。
効果的なヒートシンクの選び方
- 熱抵抗(℃/W)を確認しよう
ヒートシンクの性能を表す重要な指標が「熱抵抗」です。- 単位は「℃/W」(度毎ワット)
- 数値が小さいほど優秀
- 「1Wの熱を発生させたとき、何℃温度が上がるか」を示す
例えば、熱抵抗が1℃/Wのヒートシンクで10Wの熱を処理すると、周囲温度より10℃高くなります。
- 設置方向を考える
ヒートシンクはフィンが縦方向(上下方向)になるように設置するのが基本です。温まった空気は上昇するため、自然対流を最大限活用できます。
横向きや逆向きに取り付けると、冷却効率が大幅に低下することがあります。 - 表面積とサイズのバランス
- フィンを増やせば表面積は増えるが、空気の通り道が狭くなると対流が悪化
- フィンの間隔は一般的に3〜10mm程度が目安
- 自然対流なら広め、強制冷却なら狭めでも可
- 接触面を大切に
発熱部品とヒートシンクの接触面に隙間があると、熱がうまく伝わりません。- サーマルグリスやサーマルパッドを使用
- 取り付けネジは適切なトルクで締める
- 表面の凹凸をなるべく小さくする
実際のパワエレ機器での使い方
- インバーター
モーターの速度を制御するインバーターでは、IGBTやMOSFETといったパワー半導体が発熱します。大型のヒートシンクやファンと組み合わせて冷却します。
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- 電源装置
スイッチング電源では、トランジスタやダイオードが発熱源。小型化が求められる分野では、銅製の高性能ヒートシンクが使われることも。
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- 電気自動車(EV)
大電流を扱うため、水冷式ヒートシンク(冷却液を流すタイプ)が使われることが多いです。
ヒートシンクを使う上でのノウハウ
- 自然対流 vs 強制対流
- 自然対流:ファン不要で静音・故障リスク低。ただし冷却能力は限定的
- 強制対流:ファンで空気を送り、冷却能力を2〜5倍に向上。消費電力や騒音が課題
設計時は、必要な冷却能力とコスト、信頼性のバランスを考えます。
- 黒色塗装は効果的?
放射による放熱を高めるため、ヒートシンクを黒く塗装することがあります。ただし、前述の通り放射の効果は限定的なので、劇的な改善は期待できません。
むしろ塗装の厚みが伝導を妨げることもあるため、注意が必要です。 - ファンの配置
強制冷却の場合、ファンはヒートシンクに風を押し込む配置と引き抜く配置があります。一般的には押し込みの方が効率的ですが、筐体全体のエアフローを考慮して決めます。
まとめ:ヒートシンクは縁の下の力持ち
ヒートシンクは地味な存在ですが、電子機器の信頼性と寿命を支える重要な部品です。
覚えておきたいポイント:
- 熱は伝導→対流で逃がす
- 表面積を増やすためにフィンをつける
- 材料は軽くて安いアルミが主流
- 熱抵抗の数値が小さいほど高性能
- 設置方向と接触面が冷却効果を左右する
パワエレ機器の設計や選定では、発熱量を計算し、適切なヒートシンクを選ぶことが成功の鍵です。小さな工夫の積み重ねが、機器の性能と信頼性を大きく向上させるのです。
次に電子機器を手に取ったら、ぜひヒートシンクを探してみてください。その繊細な形状の一つ一つに、設計者の知恵が詰まっているはずです。


