バイパスコンデンサって、そもそもナニ?

はじめに

私たちの身の回りには、スマホ、パソコン、テレビ、冷蔵庫など、たくさんの電化製品がありますよね。これらすべての製品は「電気」で動いています。電気は、私たちが普段使っている水道の水に例えられることが多いのですが、電気回路の世界では、この「水」がスムーズに、かつ安定して流れることがとても大切なんです。

ところが、電気の世界には、目には見えないけれど厄介な「ノイズ」というものが存在します。まるで、水道管にゴミが詰まったり、水の流れが乱れたりするようなもの。これが回路の誤動作の原因になったり、性能を悪くしたりするんです。

そこで登場するのが、今回の主役「バイパスコンデンサ」です!

バイパスコンデンサって、何をしてるの?

名前だけ聞くと、ちょっと難しそうですよね。「バイパス」と「コンデンサ」。

  • コンデンサ:これは電気を一時的に貯めたり、放出したりできる部品です。例えるなら、小さな「電気の貯水池」のようなものだと思ってください。
  • バイパス:これは「迂回させる」とか「脇道」という意味です。高速道路のバイパスも、混雑している市街地を避けてスムーズに流れるための道ですよね。

この二つが合わさった「バイパスコンデンサ」は、ズバリ「電気のノイズを、本体回路に影響を与えないように脇道に逃がし、電源を安定させる部品」なんです。ちなみにエンジニアの間ではバイパスコンデンサを省略して「パスコン」と呼ぶこともあります。

なんでバイパスコンデンサが必要なの?

もう少し具体的に、なぜこの部品がそんなに大切なのかを見ていきましょう。

  1. 電源の「ゆらぎ」を抑えるため 私たちの身の回りにある電気製品の中には、「IC(Integrated Circuit)」と呼ばれる小さな脳みそのような部品がたくさん入っています。このICは、とても高速で複雑な計算をしたり、データを処理したりしています。

例えるなら、運動選手がダッシュするときを想像してください。一瞬で大きなエネルギー(電流)を必要としますよね。ICも同じで、高速で処理を行う際に、瞬間的にたくさんの電流を「グンッ!」と消費します。

するとどうなるか? 電源から供給されている電圧が、その一瞬だけ「フッ」と下がってしまうことがあるんです。まるで、水を勢いよく使うと水道の蛇口から出る水量が少し減るようなものです。この「フッ」という電圧の変動が、ICにとっては大問題! 誤動作の原因になったりします。

そこでバイパスコンデンサの出番です! ICのすぐそばに「電気の貯水池」であるバイパスコンデンサを置いておくと、ICが瞬間的に電気を欲しがった時に、貯めておいた電気を「はい、どうぞ!」とすぐに供給してくれます。これにより、電源の電圧が「フッ」と下がるのを防ぎ、常に安定した電気を供給できるようになるのです。

  1. 「ノイズ」を退治するため 電気回路の中では、ICがデータを処理するたびに、目には見えないけれど「ノイズ」と呼ばれる高周波の電気的な波が発生します。このノイズは、回路の中をウロウロして、他の部品に悪影響を与えたり、場合によっては外に漏れ出て電波障害の原因になったりすることもあります。

バイパスコンデンサは、この厄介なノイズが大嫌いです。ノイズが電源ラインに入り込もうとすると、バイパスコンデンサがまるで「落とし穴」のようにそのノイズをキャッチし、そのまま別の「脇道(グラウンドという電気の基準点)」へと逃がしてくれます。これにより、ノイズが本体回路に悪さをすることを防ぎ、クリーンな電気環境を保つことができるのです。

どこで使うの?

バイパスコンデンサは、主にICの電源ピン(電気が入ってくる足)の「すぐ近く」に取り付けられます。これは、先ほどの例え話で言うと、水道の蛇口のすぐ近くに貯水池を置くのと同じで、必要な時にすぐに電気を供給し、ノイズをすぐに捕まえるためです。

また、ノイズには様々な性質(周波数)のものがあるため、一つの回路に複数のバイパスコンデンサが使われることもよくあります。容量の異なるコンデンサを複数並べることで、いろいろな種類のノイズに対応できるようにしているのです。

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まとめ

バイパスコンデンサは、電気回路が安定して、かつ正しく動作するために欠かせない、まさに「縁の下の力持ち」のような部品です。

  • ICが瞬間的に電気を欲しがった時に、安定して供給する「電源の安定化役」。
  • 回路内で発生する厄介なノイズを、本体に影響なく逃がす「ノイズ除去役」。

地味な存在かもしれませんが、この小さな部品のおかげで、私たちの身の回りにある様々な電化製品が、今日も安定して快適に動いてくれているのです。

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