リチウムイオンバッテリーは、なぜ危険?

はじめに
リチウムイオンバッテリー(Li-ionバッテリー)は、スマホやノートパソコン、電気自動車(EV)など、私たちの生活に欠かせない重要な電池です。しかし、ニュースなどで「発火」「爆発」など危険を感じさせる話を聞いたことがある人も多いでしょう。
今回は、リチウムイオンバッテリーが危険と言われる理由を、初心者にもわかりやすく解説します。
1. リチウムイオンバッテリーの基本特性
まず、リチウムイオンバッテリーの特徴を知ることが必要です。
エネルギー密度が高い
- リチウムイオンバッテリーは、他の種類の電池(ニッケル水素電池など)と比べて多くの電気を蓄えられます(高エネルギー密度)。
- 同じサイズでもたくさんの電気を蓄えられるため、軽量・コンパクトで持ち運びが簡単。
しかし、この「たくさんエネルギーを蓄える」仕組みが、場合によっては危険な結果を引き起こす可能性があるのです。
2. リチウムイオンバッテリーが危険な理由
リチウムイオンバッテリーが危険視されるのは、次のような理由によります。
① 内部ショート(短絡)の危険性
バッテリー内部の構造 | バッテリーは「正極」「負極」、その間を隔てる「セパレーター」から構成されています。正極と負極が直接触れる(ショートする)と、発熱・発火する危険性があります。 |
損傷が原因 | セパレーターが薄い膜でできているので、落下や衝撃で破れたり、バッテリー外装に損傷があるとショートが発生します。 例) セパレーターが薄い膜でできているので、落下や衝撃で破れたり、バッテリー外装に損傷があるとショートが発生します。 |
② 高エネルギー密度によるリスク
高エネルギー密度=たくさんのエネルギーを小さな空間に閉じ込めている状態です。
もし制御が失敗して一気にエネルギーが解放されると、発火や爆発を引き起こすことがあります。
例えば・・・
誰かが風船を膨らましすぎて突然破裂してしまう状況を想像してください。リチウムイオンバッテリーは、このように「限界を超えると壊れる」という特性があります。
③ 熱暴走の危険
リチウムイオンバッテリーが高温になると、内部で化学反応がどんどん加速し、さらに強い熱を生み出す自己増殖的な現象が起こります。これを「熱暴走」と言います。
熱暴走の連鎖の流れ
→ 高温やショートで内部温度が上昇。
→ 電解液が化学反応を起こして更に熱を発生。
→ バッテリーが燃えたり爆発したりする。
起こりやすい場面
- 炎天下の車内にバッテリーを長時間放置。
- デバイスの過充電や、充電しながら熱い状態で使い続ける。
④ 不良品や粗悪品の使用
非純正品の充電器やバッテリーを使用すると、適切でない制御が行われ、過充電や過放電が原因で発火・破裂に繋がることがあります。
例) 安いスマホ充電器や、信頼性に欠けるメーカーのバッテリーを購入・使用した場合。
⑤ リチウムの性質
リチウムは非常に燃えやすい金属であり、特に空気中の酸素や水に反応しやすく、一度火がつくと消火が難しい特徴があります。このため、異常が起きた場合に激しく燃える可能性が高いです。
3. 安全に使うためのポイント
① 正しい使い方
純正品を使用する | 充電器やバッテリーなどは純正品を使いましょう。 |
充電中の注意 | 充電中はデバイスやバッテリー部分が熱くなりすぎるのを防ぎましょう。 布団やクッションなど通気の悪い場所で充電しない。 |
高温環境を避ける | 炎天下の車内や直射日光に長時間置かない。 40℃以上の環境で使用するとバッテリーの劣化やリスクが高まります。 |
衝撃を避ける | 落としたり、圧力をかけたりせず、バッテリーを物理的に傷つけないように注意しましょう。 |
② 異常に気づいたら
バッテリーが膨らんでいる・異常に熱くなっている・焦げ臭いなどの異常が見られたら、すぐに使用を中止してください。
発火や爆発の危険を感じたら
- 周囲に可燃物を置かない
- 不燃性の容器(金属製バケツなど)に入れて安全な場所に移動
- メーカーか専門業者に相談
4. 安全対策と今後の技術開発
リチウムイオンバッテリーの安全性改善のため、以下のような技術が開発されています:
① 全固体電池に注目
- 「液体の電解質」を「固体」に置き換えた次世代バッテリー。
- 液漏れ・発火が起こりにくく、安全性が高い。
- 実用化が進められています。
② 自己消火技術の採用
☆ 内部に自己消火機能を持つ材料を使ったバッテリー開発も進行中。
まとめ
リチウムイオンバッテリーが危険と言われる理由は、高いエネルギー密度や熱暴走、損傷時のショートなどに起因します。
安全に使うコツ
- 純正品の充電器やバッテリーを使う。
- 高温や衝撃を避ける。
- 異常を感じたらすぐに使用をやめ、安全な場所へ移動する。
リチウムイオンバッテリーは非常に便利なものですが、正しく扱うことが大切です。正しい知識を持ち、安全に使いましょう!