電源・バッテリーの負荷試験って、そもそもナニ?

負荷試験が必要なものは?

一般的な会話の中ではアスリートが「体に負荷をかける」などと言いますが、負荷をかけると言う表現はトレーニングなどでエネルギーを大量に消費させるときに使われますね。電源の業界ではトレーニングで消費させるのではなく、電流を流して電力を消費させることを「負荷をかける」と言います。

人間(アスリート)電源
負荷をかける、とは(ハード)トレーニングの実施出力に大電流(定格電流)を流す
負荷試験とは体力測定出力に電流を流して試験すること

このように、電源と呼ばれるものには負荷試験が必要であり実際に実施されているのですが、一口に電源と言っても世の中には様々な電源が存在します。

電源の種類

身近なものでは乾電池も電源のひとつであり、スマホやノートPCのACアダプタ(充電器)も電源と言うことができます。主なものについて表にまとめてみました。

製品出力備考
乾電池直流
太陽電池直流太陽の「光」エネルギーで直流を発電
燃料電池直流水素と酸素で水を作るときに発生する電気を利用
(水の電気分解の逆)
ACアダプタ(充電器)直流ACコンセントの交流を直流に変換
スイッチング電源
(AC→DC, DC→DC)
直流PCやプリンタ、液晶テレビなど様々な家電製品には
形を変えて必ずと言っていいほど組み込まれている
UPS交流無停電電源(停電時にバッテリーから電源を補助)
インバータ交流直流を交流に変換
風力発電システム交流「風」のエネルギーを交流電力に変換
燃料電池発電システム交流燃料電池の発電出力を交流に変換

このような電源の負荷試験を実施する場合、以下のような負荷装置が必要となります。

  • 抵抗負荷装置
    抵抗器に電流を流し、電力消費で発生した「熱」を空気中に放出する
  • 電子負荷装置(ドロッパー方式)
    FETなどの半導体に電流を流し、電力消費で発生した「熱」を空気中に放出する
  • 電子負荷装置(回生方式)
    電源から吸い込んだ電流を交流に変換し、系統(商用ライン)に戻して電力を再利用することができる

抵抗負荷装置の場合

抵抗負荷では図のように負荷抵抗器に電流を流し、負荷抵抗器が発熱して暖められた空気を上部に放出します。大電力の場合、部屋の気温まで上昇するため場合によってはエアコンで部屋を冷やすことになります。

抵抗負荷試験のフロー

電子負荷装置(ドロッパー方式)の場合

ドロッパー方式電子負荷の場合、負荷抵抗器ではなくFETなどのパワーデバイスに電流を流します。このときに発生した熱は抵抗負荷と同じように空気中に放出されます。

電子負荷試験のフロー

電子負荷装置(回生方式)の場合

回生方式電子負荷の場合はちょっと、いや、かなり異なります。D.U.T.からのエネルギーは負荷の中で消費せず、交流に変換して系統(商用ライン)に戻し、下図のように再利用することができますのでCO2排出削減に貢献できる省エネ指向の電子負荷ということができます。

回生負荷試験のフロー

各負荷の比較

ここまでの説明では回生方式の電子負荷が有れば他の方式は無くても良いのではと思われるかも知れませんが、それぞれの方式に長所・短所がありますのでご紹介します。

抵抗負荷電子負荷
(ドロッパー方式)
電子負荷
(回生方式)
機能少ない(操作は簡単)多い中間
負荷設定速度※1遅い高速中間
負荷応答速度※2高速低速
外部制御非対応※3対応対応
負荷容量帯小~中小~中中~大
省エネ効果低い低い高い
価格帯比較的低い中間比較的高い

※1 : 負荷設定速度は、操作パネル等で電流値を設定してから実際に電流が流れ始めるまでの速度で、抵抗負荷は手作業で電流設定を行いますので遅くなります。
※2 : 負荷応答速度は、電流が流れ始めてから目的の電流値(設定値)に到達するまでの時間で、車で言えば加速度に相当するものです。
※3 : 抵抗負荷もやり方によってはON/OFFなどの制御は可能ですが、ここでは負荷電流設定などの細かな制御が難しいという意味で「非対応」とさせていただきました。

色々な負荷試験

少し乱暴な言い方ですが、「とりあえず電流が流れれば良い」という用途でしたらどんな方式の負荷装置でも問題無いと思われます。しかしながら例えば以下のような用途で使用する場合、その用途に適した負荷装置が必要になります。

用途用途に適した主な負荷装置
研究室などの基礎実験抵抗負荷、ドロッパー電子負荷
製品のエージング抵抗負荷、回生電子負荷
検査ラインの自動化ドロッパー電子負荷(インターフェース付き)
インバータの負荷試験ドロッパー電子負荷
PCS(パワーコンディショナ)の負荷試験ドロッパー電子負荷、回生電子負荷
風力発電装置の負荷試験回生電子負荷
燃料電池発電装置の負荷試験回生電子負荷
高速コンバータの負荷応答試験ドロッパー電子負荷(高速応答モデル)

※電子負荷には直流用、交流用、交直両用のタイプがあり、直流用の電子負荷は交流には使えませんが、交流用電子負荷は用途によっては直流でも使える場合があります。

高速コンバータの負荷応答試験

この試験は少し特殊なので詳しくご説明します。ふだん皆さんが使っているPCは年々高速になっていることはご存じのことと思います。高速とは処理速度が速いということですが、では具体的に何が速くなったのでしょうか?それを端的に表しているのはCPUの動作クロック(周波数)と思います。PCの頭脳と言われるCPUはクロックを基準に動作しており、クロックが速いほど処理速度も速くなります。(実際の体感速度はメモリの容量やハードディスク等のアクセススピードにも影響を受けます)
例えば現在お使いのPCで、Windows10の「設定」から「システム」を開き、さらに「詳細情報」を選択してみてください。プロセッサの項目にCPUの型式と動作周波数が表示されていると思います。

この場合、2.93GHz が動作クロック(周波数)になるわけですが、いったいどのくらいのスピードなのかピンときませんね。わかりやすくするために身近なものと比較してみましょう。
コンセントの交流を50Hzとすると、1秒間に50回繰り返していることになりますが、CPUクロックの2.93GHzではどうでしょうか。比較しやすいように単位をHzにしてみます。

2.93GHz = 2,930MHz = 2,930,000kHz = 2,930,000,000Hz

なんと、29億3,000万Hzとなりますので、1秒間に29億3,000万回も繰り返していることになります。ちなみにこれを周期でも比較してみましょう。50Hzの1周期は 1 / 50秒 = 0.02秒となり、2.93GHzの1周期は、1 / 2,930,000,000 ≒ 0.34×10-9秒 = 0.34ナノ秒となりますので、とてつもなく短い時間で繰り返しているのです。

 人間の基準クロックを仮に1秒単位とすれば、PCのCPUは29億倍の速さで様々な処理をしていることになります。CPUが高速に動作しているということは、それに接続されているRAM(メモリ)やHDD(ハードディスク)等も高速に動作している訳ですが、これはPCに供給する電源側から見ると非常に厳しい条件となります。つまり、様々なデバイスが高速に動作するということはデバイスに流れる電流も高速に変化するため、「高速な電流変化に耐えられる高速応答対応電源が必要になる」ということです。

ここまででおわかりかも知れませんが、このような電源を試験するためには負荷電流を高速に変化することが必須のため、高速応答電子負荷が使われています。

まとめ

アスリートがジムでトレーニングするときに様々なツールがあるように、電源の負荷試験においても、その用途によって適した負荷があるということをご理解いただけたと思います。ドロッパー方式の直流電子負荷については解説用の動画コンテンツも公開していますので、ぜひご覧ください。

関連ページ

電子負荷の基本モードってナニ? https://www.youtube.com/watch?v=2Rh_Kuvw57A&t=3s
電子負荷のスルーレートってナニ? https://www.youtube.com/watch?v=atQDKrcebXc&t=3s
スルーレートが速くていいことってナニ https://www.youtube.com/watch?v=faBcj-q2iOw
インダクタンスの影響ってナニ? https://www.youtube.com/watch?v=SxDOuyL7g4k&t=2s
直流電子負荷 https://www.keisoku.co.jp/pw/product/power/dc-load/
交流電子負荷 https://www.keisoku.co.jp/pw/product/power/ac-load/

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