回路保護って、そもそもナニ?

はじめに

私たちの周りには、たくさんの電気製品がありますよね。テレビ、冷蔵庫、パソコン、スマートフォン…これらがない生活なんて、もう考えられないくらい便利です。でも、電気は便利な反面、ちょっとしたことで危険なトラブルを引き起こす可能性も秘めています。

例えば、

  • 使っていたドライヤーが急に煙を吹いた!
  • 家電がたくさん繋がったコンセントから火花が散った!
  • 雷が落ちて、家中の電化製品が壊れてしまった!

こんな「もしも」の時に、私たちの命や大切な家電、そして家全体を守ってくれるのが、今回のテーマである「回路保護(かいろほご)」なんです。

なぜ回路保護が必要なの?

回路保護とは、簡単に言うと「電気の通り道(回路)を、異常な状態から守ること」です。 具体的には、主に次の3つの危険から私たちを守ってくれます。

  1. 過電流(電気が流れすぎること)
    一つの電気の通り道に、たくさんの電気が一気に流れ込もうとすると、電線が熱くなりすぎて燃え出したり、家電が壊れたりする危険があります。まるで、細い水道管に大量の水を流そうとするようなものです。

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  1. 短絡(ショート、電気が間違った道を通ること)
    電線の被覆が剥がれて他の電線と接触するなど、電気が本来の通り道ではない場所を通ってしまうことがあります。これは非常に危険で、大量の電流が一瞬で流れ、大きな火花や熱を発生させ、火災や感電の原因になります。
  2. 過電圧(電気の圧力が上がりすぎること)
    雷が近くに落ちたり、電力供給に異常があったりすると、瞬間的に非常に高い電圧(電気の圧力)が電気の通り道に流れ込むことがあります。これにより、家電製品が一瞬で故障したり、最悪の場合、火災につながることもあります。

これらの危険から私たちを守るために、様々な「回路保護デバイス」が活躍しています。まるで、電気の異常を監視し、危険を察知したらすぐに電気の流れを止める「番人」のような存在です。

それでは、代表的な回路保護の「番人」たちを見ていきましょう!

電気の番人たちをご紹介!

  1. ヒューズ 〜電気の「身代わり」になって溶ける使い捨ての番人〜
    ヒューズは、回路保護デバイスの中で最もシンプルで身近な存在かもしれません。 もし、電気の通り道に過電流(流れすぎる電気)が流れそうになったら、ヒューズの中にある細い金属線が、自らが熱で溶けることで電気の流れを断ち切ります

特徴

使い捨て一度溶けてしまうと元には戻せません。新しいヒューズに交換する必要があります。
シンプルな構造安価で様々な機器に使われています。
用途電子機器の内部(テレビ、オーディオなど)、自動車、ACアダプターなど、比較的小さな電流を扱う場所でよく見かけます。

例えるなら、自分を犠牲にしてでも、あなたや大切な家電を守ってくれる「身代わり」のような存在です。

  1. ブレーカ(配線用遮断器、安全ブレーカなど) 〜何度でも立ち上がる、頼れる番人〜
    皆さんのご家庭の分電盤(でんぷんばん)に、たくさんのスイッチが並んでいるのを見たことがありますか?あれが、ブレーカです。ヒューズとよく似た役割を持っていますが、大きな違いがあります。
    ブレーカも、過電流や短絡(ショート)といった異常を検知すると、自動的にスイッチが「OFF」になり、電気の流れを遮断します。 そして、異常が解消されれば、手動でスイッチを「ON」に戻すだけで、再び電気を使えるようになります

特徴

繰り返し使える何度でもON/OFFを切り替えて使えます。
大きな電流に対応電気が本来通るべき道以外に漏れてしまう「漏電」を検知し、感電や火災を防ぎます。
種類配線用遮断器 主に過電流や短絡から電気の通り道全体を守ります。 漏電遮断器 電気が本来通るべき道以外に漏れてしまう「漏電」を検知し、感電や火災を防ぎます。 安全ブレーカ 各部屋やコンセントごとに設置され、特定の回路の過電流から守ります。

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ブレーカは、まさしく「何度でも立ち上がるヒーロー」のような存在で、私たちの生活の安全を24時間体制で守ってくれています。

  1. サージアブソーバ(SPD: Surge Protective Device) 〜雷からの攻撃を跳ね返す盾〜
    突然の雷や、電力会社の設備トラブルなどで、瞬間的に非常に高い電圧(「サージ」または「雷サージ」と呼ばれます)が流れてくることがあります。このサージは、私たちが普段使っている家電製品にとっては猛毒のようなもので、一瞬で壊してしまう可能性があります。
    サージアブソーバは、この高すぎる電圧が来たら、それを吸収したり、一時的に別の安全な道に逃がしたりして、家電製品を守ります

特徴

過電圧保護雷などの瞬間的な高い電圧から機器を守ります。
寿命があるものも大量のサージを受けると劣化し、保護能力が低下するものもあります。
用途電源タップに内蔵されているものや、家の分電盤に取り付けるタイプ、通信回線用など様々です。

サージアブソーバは、大切なパソコンやテレビ、冷蔵庫などを「雷の攻撃」から守る、頼もしい「盾」のような存在と言えるでしょう。

その他の回路保護デバイス(少しだけご紹介)

  • ポリスイッチ(自己復帰型ヒューズ)
    ヒューズのように溶けますが、電流が正常に戻ると再び通電する、繰り返し使えるタイプのヒューズです。USBポートなど、小型機器によく使われます。
  • サーミスタ

電流が急に流れ込む「突入電流」を抑えたり、温度が高くなりすぎた時に電流を制限したりする部品です。

まとめ

電気は私たちの生活に欠かせないインフラですが、その便利さの裏には常に危険が潜んでいます。しかし、ヒューズやブレーカ、サージアブソーバといった様々な「回路保護デバイス」が、私たちの目に見えないところで常に電気を監視し、いざという時には身を挺して守ってくれています。

これらのデバイスが正常に機能しているからこそ、私たちは安心して電気を使うことができるのです。彼らはまさに、私たちの生活の安全を支える「縁の下の力持ち」であり、電気の「もしも」に備える、頼れる守り神たちなのです。

もし、ご家庭のブレーカが落ちた時には、何が原因だったのか少し考えてみてください。それは、守り神たちがあなたの身代わりになってくれた証拠かもしれませんよ。