電力変換って、そもそもナニ?

はじめに

「電力変換」──この言葉を聞いて、ピンとくる人は少ないかもしれません。「電力?」「変換?」なんだか難しそう、と思う方もいるでしょう。でも実は、私たちの生活のあちこちで、この「電力変換」が大活躍しているんです。

今回は、この「電力変換」が一体何なのか、そしてなぜ私たちの生活に欠かせないのかを、できるだけ分かりやすくひも解いていきましょう。

そのスマホ、なぜ動く?身の回りの「電気の形」

まずは、少しだけ身の回りを見回してみてください。スマートフォン、パソコン、テレビ、冷蔵庫、エアコン……。これら、私たちの生活を便利で快適にしてくれる家電製品は、すべて「電気」で動いています。

でも、ちょっと考えてみてください。壁のコンセントから出てくる電気と、スマートフォンのバッテリーに蓄えられている電気、そして冷蔵庫のモーターを動かす電気は、ぜんぶ同じ「電気」だと思いますか?

実は、違うんです! 例えるなら、料理に使う「水」のようなもの。 水道から出てくる水は、お風呂を沸かしたり、洗濯に使ったりできます。でも、コーヒーを淹れるにはお湯にしないといけないし、氷にするには冷やし固める必要がありますよね。用途に合わせて、水の「形」や「状態」を変えているわけです。

電気もこれと似ています。 発電所から送られてくる電気は、みんなで使うための「大元の電気」です。でも、それぞれの家電製品は、そのままだと使えないことが多いんです。なぜなら、それぞれが必要とする「電気の形」が違うから。

ここで登場するのが、「電力変換」です!

電力変換とは、「電気の形や性質を変えること」

簡単に言えば、電力変換とは「電気の形や性質を、別の形や性質に変えること」です。 電気には、主に次の2つの「形」があります。

交流(AC)電気の流れる方向が時間とともに周期的に変わる電気。 発電所から家庭まで送られてくる、私たちがコンセントから受け取っている電気はこれです。 まるで波のように揺れ動く電気、とイメージしてください。
直流(DC)電気の流れる方向が常に一定の電気。 乾電池やスマートフォンのバッテリーに蓄えられている電気はこれです。 まっすぐ一方向に流れる電気、とイメージしてください。

ほとんどの家電製品は、交流と直流のどちらか一方を必要としたり、適切な電圧(電気の勢い)が必要だったりします。だから、大元の交流電気を、家電が「使いやすい形」に変えてあげる必要があるんですね。

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身近な電力変換の「ナニコレ!?」事例

具体的な例を見ていくと、「電力変換」がどれだけ身近で重要なものか、もっとよく分かります。

事例1:スマートフォンやパソコンの充電器(ACアダプター)

これが一番分かりやすい電力変換の例かもしれません。 壁のコンセントからは「交流(AC)」の電気が来ていますが、スマートフォンのバッテリーに電気を蓄えるには「直流(DC)」である必要があります。しかも、電圧もぐっと低くする必要があります。 充電器(ACアダプター)は、この「交流(AC)を直流(DC)に変換し、電圧も適切な低さに変える」という大事な役割を果たしているんです。

事例2:冷蔵庫やエアコンの「インバーター」

最近の家電製品によく使われている「インバーター」という技術も、電力変換の一種です。 昔の家電は、モーターをオンかオフで動かすだけでしたが、インバーターは交流の電気の「波の形」や「勢い」を自由に変えることで、モーターの回転数を細かくコントロールできるようになりました。 これにより、必要に応じてモーターをゆっくり回したり、速く回したりできるため、無駄な電気を使わずに済み、省エネにつながっています。

事例3:太陽光発電

太陽電池パネルは、太陽の光を受けて電気を作りますが、このとき作られる電気は「直流」です。 でも、家庭で使っている電気は「交流」ですよね? そこで必要になるのが、「パワーコンディショナー」と呼ばれる電力変換装置です。これは「直流(太陽電池)を交流(家庭用)に変換する」役割を担っています。これにより、太陽の恵みを私たちの生活で使える電気に変えているのです。

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事例4:電気自動車(EV)

電気自動車も電力変換の塊です。 充電する時は、充電スタンドからの交流をバッテリーに蓄える直流に変換します。 そして、バッテリーの直流電気を、モーターを動かすための交流電気に変換して走ります(モーターの回転数も細かく制御します)。 まさに、電気の形を変えまくりながら走っているわけです。

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なぜ電力変換が必要なの?

電力変換がなぜそこまで重要なのか、その理由をまとめると、主に次の3つが挙げられます。

効率的なエネルギー利用発電所から送る電気は、たくさんの量を効率よく運ぶために高電圧の交流が適しています。でも、家庭で使うには低電圧の交流や直流が必要です。電力変換で最適な形にすることで、電気の無駄を減らし、安定して供給できます。 家電を省エネで動かすためにも、電力変換は欠かせません。
多様な電気機器への対応スマートフォン、パソコン、冷蔵庫、LED照明など、様々な電気製品がそれぞれ違う「電気の形」を求めています。電力変換のおかげで、一つのコンセントから多様な機器を使えるようになっています。
新しいエネルギーの活用太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、それぞれ独自の形で電気を作り出します。これらを私たちが使える電気に変換するためには、電力変換技術が不可欠です。環境に優しい社会を作る上でも、電力変換はますます重要になっています。

まとめ:見えない「縁の下の力持ち」

「電力変換」という言葉は馴染みが薄いかもしれませんが、私たちの快適で便利な生活を支える、まさに「見えない縁の下の力持ち」のような存在です。

スマートフォンを充電したり、エアコンで快適な室温にしたり、冷蔵庫が食料品を守ってくれたり……。これらの当たり前のことが実現できるのは、電気の形を、必要な形へと適切に変えてくれる「電力変換」の技術があるからなのです。

これからの社会は、ますます電気の使われ方が多様になり、再生可能エネルギーの活用も進んでいきます。そうした中で、電力変換の技術はますます進化し、私たちの生活をさらに豊かに、そして地球に優しいものへと導いてくれるでしょう。

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