MS-DOSって、そもそもナニ?

はじめに

現在のパソコンを思い浮かべると、マウスやタッチパネルを使ってアイコンをクリックして操作するのが当たり前ですよね。でも、今から数十年前にはそんな「直感的な操作」は夢のまた夢でした。当時のパソコン操作はマウスは無く、キーボードのみで「MS-DOS」という文字だけの画面が主役だったのです。本日は、このMS-DOSについて、その起源からWindowsに進化するまでの物語をお届けします!

MS-DOSの起源:シンプルな始まり

MS-DOSとは、「Microsoft Disk Operating System(マイクロソフト ディスク オペレーティング システム)」の略で、1981年にマイクロソフトがリリースしたパソコン向けの基本ソフトウェア(OS)です。名前の通り、主に磁気ディスクを操作するためのシンプルな機能を持つOSで、当時のコンピュータに必要不可欠なものでした。

でもここで重要なポイントがあります。実はMS-DOSは、マイクロソフトがゼロから作ったものではないのです。そのルーツは「86-DOS」という名前のOS。この86-DOSを開発したのは、マイクロソフトではなく小さな企業「シアトル・コンピュータ・プロダクツ(SCP)」でした。これをビル・ゲイツ率いるマイクロソフトが購入して、自社製品として改良し販売したのがMS-DOSの誕生ストーリーです。

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IBMとの出会いが運命を変えた

MS-DOSが世の中で広く使われるきっかけとなったのが、コンピュータの巨人「IBM」との契約です。当時、IBMは新たにパソコン市場に参入する計画を立てていました。その中で、肝心のOSの開発は外部に委託するという選択をします。最初に接触したのが、当時のOS市場を席巻していたデジタルリサーチ社でしたが、契約交渉がまとまらず、次に声をかけられたのがマイクロソフトでした。

マイクロソフトは、大胆にも買収したばかりの86-DOSを元にIBM用にカスタマイズを提案。こうして誕生したのが「PC DOS」と呼ばれるIBM版のOSです。一方で、マイクロソフトはそのライセンスを他のメーカーにも販売しやすい形にして「MS-DOS」として流通させました。このようにして、MS-DOSは一躍パソコン市場のスタンダードとしての地位を確立していきました。

MS-DOSからWindowsへの変遷

MS-DOSは当時のパソコン業界で画期的なOSでしたが、明らかな制限もありました。例えば、「シングルタスク(一度に1つの作業しかできない)」や「コマンド入力が必須」など、初心者には敷居が高いものでした。そのため、ユーザーがもっと簡単にコンピュータを使えるようにする必要がありました。

そこで登場したのが「Windows」です。1985年にリリースされた初代Windows(Windows 1.0)は、実はMS-DOSの上で動作する「拡張機能」のようなものでした。つまり、Windows自体はMS-DOSに頼って動いていたのです。この構造はWindows 3.xまで続きました。

しかし、1995年の「Windows 95」で状況が変わります。このバージョンでは、Windowsがより独立したOSとして設計され、MS-DOSの役割は大幅に軽減されました。その後「Windows NT」シリーズに進むと完全にMS-DOSを不要とする構造が確立され、Windowsは今のような形に進化を遂げたのです。

現代に生きるMS-DOS

「もうMS-DOSは過去のもの」と思うかもしれませんが、実はそうではありません。現代のWindowsにも、「コマンドプロンプト」という形でその影響が残っています。この黒い画面でコマンドを直接入力する機能は、まさにMS-DOSの精神を受け継いでいます。システム管理やトラブルシューティング、スクリプトの自動化などで活用されており、MS-DOSのDNAは今なおITの世界で息づいているのです。

MS-DOSの功績とその遺産

MS-DOSは今日のコンピュータ文化の礎を築いた、忘れてはならないOSです。そのシンプルさゆえに多くのパソコンで使われ、世界中のユーザーのコンピューティング体験を支えました。そしてMS-DOSからWindowsへという流れは、IT業界そのものを大きく変える進化の物語でもあるのです。