COMポートエミュレータの不思議

はじめに

「COMポートエミュレータ」と聞いて、「それって何?」と思う方も多いのではないでしょうか?しかし、この技術は実に興味深く、多くの現場やシステムで利用されている便利なツールです。本記事では、初心者の方にもわかりやすい形で「COMポートエミュレータ」についてお話ししていきます!

COMポートエミュレータって、何?

まず、COMポートについて簡単に説明しましょう。COMポートとは、PCと外部機器(例えば、バーコードリーダーやセンサーなど)を接続するための「通信ポート」のことです。昔はシリアルポートやRS-232Cと呼ばれるハードウェアの形を持つものでした。

しかし最近では、多くのPCから物理的なシリアルポート(D-Sub 9ピンなど)が姿を消し、その代わりにUSB接続が主流になっています。そこで登場するのが「COMポートエミュレータ」です。

COMポートエミュレータとは、「物理的なCOMポートを持たないPCで、実際の接続はUSB経由としソフトウエア的に仮想的なCOMポートを作成し、あたかも実際のCOMポートのように振る舞わせる技術またはソフトウエア」となっています。

なぜ必要?

さて、「何でわざわざ仮想的なCOMポートを作成する必要があるの?」と疑問に思うかもしれません。実際、以下のようなケースでCOMポートエミュレータは必要とされています。

ケース概要
古いソフトウエアやデバイスのサポート多くの業務用デバイス(例えば、工場のセンサーや医療機器など)やソフトウエアは、いまだに物理的なCOMポートを前提に動作しています。こうした場面で、コンピュータ自体に物理的なCOMポートがない場合でも、「仮想COMポート」があれば、それらのデバイスやソフトウエアを問題なく動かすことができるのです。
複数のCOMポートが必要な場合通常、PCにはCOMポートが1つか2つしかありません。しかし、シミュレーション試験や多デバイス環境では、複数のCOMポートが必要になる場合があります。COMポートエミュレータを使えば、仮想的に必要な数だけポートを作成することが可能です。
データ通信のテストやデバッグ開発者やエンジニアがシリアル通信のテストを行う際に、実機を使う代わりに仮想COMポート間で通信をシミュレーションできます。これにより、ハードウェアがなくても事前に通信の確認やトラブルシューティングが行えます。

COMポートエミュレータの使われ方

では、実際にCOMポートエミュレータがどのように使われているのか、具体例とともに見ていきましょう。

  • 仮想シリアルポートの作成
    あるソフトを使用する際、ソフトが「COM5」を必要とする場合、「仮想COM5」というポートをソフトウエアで模擬して、それをそのままソフトが認識・使用することができます。
  • 仮想COMポート間の通信
    仮想COMポートを2つ作成して、それを接続することで、あたかも実際の2つのデバイスが通信しているかのように動作させることが可能です。例えば:
    ソフトA → 仮想COM1 → 仮想COM2 → ソフトB
    といった形でデータをやり取りできます。
  • リモートデバイスとの通信
    リモートのデバイスにシリアル通信でアクセスする場合にも、COMポートエミュレータを用いて仮想ポートを作り、そこから通信先のデバイスに接続する機能が利用されます。

代表的なCOMポートエミュレータのソフトウエア

現在、さまざまなCOMポートエミュレータソフトが提供されています。ここでは、いくつか有名なものを紹介します。

ソフトウエア名特徴
VSPE (Virtual Serial Port Emulator)無料で使える32bit版が人気。 仮想COMポートの作成、データモニタリング、通信シミュレーションなど多機能。 初心者から上級者まで幅広く利用されています。
com0comオープンソースソフトウエアで、仮想COMポートを作成可能。 ソースコードが公開されており、カスタマイズ性が高い。
ドライバ付属エミュレータ一部のバーコードスキャナや医療機器などには、専用ドライバとともに仮想COMポートを作成するソフトが付属しています。これにより、簡単に仮想COMポートを設定できます。 これらのツールを使えば、手軽に仮想COMポートを作成し、実際の業務や開発に活用することができます!

USB→RS-232C変換ケーブル

COMポートエミュレータとは、ソフトウエアやファームウェアによってPC上に仮想のCOMポート(シリアルポート)を作成する仕組みのことを指します。一方、USB RS-232C変換ケーブルは、USB機器(例えばPC)とRS-232Cインターフェース(シリアル通信機器)を接続する物理的な変換装置です。

しかし、この変換ケーブルを使用する際、PCがRS-232C接続のシリアルデバイスを認識するために、ドライバ(COMポートエミュレーションソフトウエア) が必要です。このドライバにより、USB接続のデバイスがあたかもCOMポートとして認識され、実機のCOMポートのように動作します。

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USB→RS-232C変換ケーブルの動作原理

通常、以下のプロセスが行われます。

1デバイスドライバがインストールされると、PCのデバイスマネージャ内で「COMポート」として表示されます。
2この仮想COMポートは、従来の物理COMポートと同じように、アプリケーションソフトウエア(例えばシリアル通信プログラム)から利用可能です。
3仮想的に作成されたCOMポートを通じて、USB経由でRS-232C信号がデバイスに送られます。

どのような場面で役立つのか?

古いRS-232Cデバイスとの接続

例えば、レガシー機器(産業機械、古い医療機器)を、RS-232Cポートを持たない新しいPCで使えるようにする役目を果たします。

開発者やエンジニアのツール

デバイスやシステムのシリアル通信のテストができます。

ドライバなしでは動作しない環境

この点はCOMポートエミュレータと同じ原理です。

おわりに

COMポートエミュレータは、現代のPC環境では物理ポートの代わりとして、また開発やテストの効率化のために欠かせない存在です。その魅力は、何といっても「見えないCOMポート」をソフトウエアで手軽に作り出し、デバイスやシステムに柔軟に対応できること。

もし「もっと知りたい!」と思われた方は、ぜひお手元で試してみてください。この技術を活用すれば、業務の効率化やシステム開発がぐっと楽になるはずです!