CANって、そもそもナニ?

はじめに
CAN(Controller Area Network)は、1980年代にドイツの自動車部品メーカーBosch社によって開発された通信プロトコルで、自動車や産業機器の制御システムで広く使用されています。今回は、わかりやすく簡潔にCANについての解説を行います。
CANとは?
CANは、車載機器の「電子制御ユニット(ECU)」同士が互いに情報をやり取りするための通信規格です。これにより、エンジン、ブレーキ、エアバッグ、照明などの自動車システム間で効率的にデータ交換が可能になります。
多用途
当初は自動車向けに設計されましたが、現在では工場の機械、医療機器、航空機、列車、ロボットなど幅広い分野で活用されています。
国際標準化
CANはISO11898規格に基づいており、国際的なスタンダードとしても認められています。
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CANの特徴
(1) 低コストな配線
- 通信には2本の電線(差動信号)を使用します。
- このシンプルな構造により、複雑なハーネス配線の削減が可能です。
(2) 高信頼性
- 差動信号を用いるため、外部のノイズに対して強い設計です。
- 衝突(複数機器が同時に通信しようとする状況)を避ける仕組みが組み込まれています。
(3) エラーチェック機能
- CANは、通信エラーを検出し、必要に応じてデータを再送信する仕組みを備えています。
(4) 柔軟なネットワーク構造
- 新しいECUやセンサーを既存のネットワークに簡単に追加できます。
- ノード(機器)数の増減が容易です。
CANのしくみ
(1) メッセージベース通信
- CANは「メッセージ」単位(ID付きのデータ)で通信を行います。
- デバイス(ノード)同士のやり取りは、送信先を特定するのではなく、共通バスにメッセージをブロードキャストします。
※各デバイスは、送信されたメッセージのIDを確認し、自身に関連するデータだけを利用します。
(2) 通信速度
- 標準的な通信速度(ボーレート)は1Mbpsまでで、一般的には500kbps以下に抑えられることが多いです。
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(3) 差動信号とドミナント/リセッシブ
- 通信には2本の通信線(CANH, CANL)を使用。
ドミナント(0):電圧差がある状態。
リセッシブ(1):電圧差がない状態。 - ドミナント信号が常に優先されます。
(4) 同期とエラーチェック
- バス上のすべてのデバイスは、リセッシブからドミナントへの変化を検知して同期を取ります。
- データの整合性を保つため、エラーチェック(CRC:循環冗長検査)が行われます。
CANのメリットと用途
(1) メリット
軽量化 | ハーネスの削減により、車両全体の軽量化を実現。 |
小型でローコスト | 安価なマイクロチップで実装可能。 |
効率的な通信 | 優先度の高い通信を先に処理できる。 |
安全性 | ノイズに強く、エラー検出機能を備えているため安心。 |
(2) 主な用途
自動車 | エンジン制御、ブレーキシステム、エアバッグ制御など。 |
工業 | ロボットや生産ライン機器。 |
医療 | 患者監視装置や制御機器。 |
航空・宇宙 | センサーネットワーク。 |
進化形:CAN FD
近年では、従来のCAN(Classic CAN)を拡張した CAN FD(Flexible Data) という新規格も登場しています。
データ速度 | 最大8Mbps |
メッセージの長さ | 最大64バイト(従来は8バイト) |
まとめ
CANは、自動車をはじめ、さまざまな分野で使用される高速で信頼性の高い通信システムです。軽量化、コスト削減、高い信頼性を実現し、今後も幅広いシステムで利用される重要な技術といえるでしょう。
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