プルアップ抵抗って、そもそもナニ?

はじめに

電子工作やプログラミングを始めると、ときどき「プルアップ抵抗」という言葉を目にすることがあります。「それって一体何のこと?」と感じる方も多いのではないでしょうか。

名前だけ聞くと難しそうですが、実はすごくシンプルで、電気回路がちゃんと動くようにするための「縁の下の力持ち」のような存在なんです。

今回は、このプルアップ抵抗について、やさしくひも解いていきましょう。

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1. 「不安定な状態」って、困るんです

まず、ちょっと想像してみてください。

皆さんがパソコンでキーボードを打つとき、キーを押せば文字が入力されますよね? 押さないときは何も入力されません。これは当たり前のことのように思えますが、電気の世界では、キーが「押されていない」という状態をちゃんと認識するのが少し難しいことがあるんです。

電気の信号には、大きく分けて「電気が流れている状態(ON、高い電圧)」と「電気が流れていない状態(OFF、低い電圧)」があります。これを、デジタル回路では「ハイ(High)」と「ロー(Low)」と呼びます。

でも、電気の回路によっては、どこにもつながっていない、宙ぶらりんの場所ができてしまうことがあります。この「どこにもつながっていない」状態が厄介なんです。

例えるなら、水の流れていないホースの先が、どこにもつながっていない状態。少しの風や振動で水が出たり止まったり、不安定になるかもしれませんよね? 電気の世界でも同じで、この「宙ぶらりん」な状態は、ちょっとしたノイズ(不要な電気信号)で、勝手に「ハイ」になったり「ロー」になったりして、とても不安定になってしまうんです。

マイコン(ArduinoやRaspberry Piなど)からすると、「あれ? 今の信号はハイなの? ローなの? どっちなの!?」と困ってしまい、誤作動の原因になってしまうことがあります。

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2. 「プルアップ」は「引っ張り上げる」こと!

ここで「プルアップ抵抗」の登場です。

「プルアップ(pull-up)」というのは、「引き上げる」という意味です。 つまり、プルアップ抵抗は、不安定な状態になりがちな回路のポイントを、いつも「ハイ(高い電圧)」の方向に「グイッと引き上げて」安定させてくれる役割を持っています。

3. スイッチで考えてみよう

一番よく使われるのが、マイコンにスイッチの状態を教えてあげるときです。例えば、スイッチが押されていないときを「HIGH」、押されたときを「LOW」とマイコンに認識させたいとします。

【プルアップ抵抗がない場合】

スイッチを押す → LOW(OK)
スイッチを離す → どこにもつながっていない「宙ぶらりん」状態!
マイコンは「HIGH」と認識したいのに、ノイズなどでたまに「LOW」と誤認識してしまう可能性が!

【プルアップ抵抗がある場合】

抵抗を使って、常にスイッチの片側を「ハイ(高い電圧)」につないでおきます。

スイッチを離しているとき:
抵抗を通して、マイコンの入力ピンは常に「HIGH」の状態に保たれます。例えるなら、常にバネで引き上げられているような状態です。

スイッチを押したとき:
スイッチがONになり、マイコンの入力ピンは抵抗を介して「LOW(低い電圧、GND)」につながります。抵抗があるため、電気が流れすぎず、マイコンが壊れることもありません。スイッチを押すことで、ハイの状態がLOWに「引き下げられる」形です。

このように、プルアップ抵抗は、スイッチが押されていない「通常の状態」を、常に安定した「HIGH」の状態に保ってくれる役割を担っているのです。スイッチが押されたときだけ、その「HIGH」の状態が「LOW」に切り替わる、という仕組みです。

4. なぜ「抵抗」が必要なの?

名前の通り「抵抗」があるのは、電流が流れすぎないようにするためです。もし抵抗がなければ、スイッチを押した瞬間に、高い電圧と低い電圧が直接つながってしまい、大電流が流れてショートしたり、部品が壊れたりする危険があります。

抵抗があることで、電流が適切に制限され、安全に信号のON/OFFを切り替えられるようになるのです。

まとめ:プルアップ抵抗は「安定剤」!

プルアップ抵抗は、簡単に言うと「回路の入力信号が不安定にならないように、いつも高い電圧側に引っ張り上げて安定させてくれる部品」です。

特に、スイッチのようなON/OFFを切り替える部分で、マイコンがきちんと状態を判断できるようにするために、なくてはならない存在なのです。

これで、皆さんも「プルアップ抵抗」が何を意味するのか、少しはわかっていただけたのではないでしょうか。これからは、電子回路図の中に「プルアップ抵抗」を見つけても、もう怖くないはずです!