しきい値って、そもそもナニ?

はじめに:私たちの身の回りにある「境界線」

「しきい値」という言葉、なんだか難しそうに聞こえますよね?でも実は、私たちの日常生活には、この「しきい値」と呼べるものがたくさん隠れています。

例えば、テストの「合格点」。

「80点以上なら合格!」この「80点」が、合格か不合格かを分ける大切な線ですよね。

また、会社の健康診断。

「血圧がこの値を超えたら、ちょっと注意が必要ですよ」と言われるときの、その「値」もそうです。

このように、「これを超えたら(あるいは下回ったら)何かアクションが起きる」「ここが分かれ目になる」という、何かを判断するための「境界線」や「基準となる値」のこと、これが「しきい値」なんです。英語では「Threshold(スレッショルド)」と言います。

しきい値(Threshold level)って、具体的にどういうこと?

もう少し詳しく説明しましょう。

しきい値とは、ある物事が「変化する」「反応する」「判断される」ための基準となるレベル(水準)のことです。

たとえば、センサーがあったとします。 「室温が28度を超えたら、自動でエアコンをつける」という設定があった場合、この「28度」がしきい値です。27度ではエアコンはつきませんが、28度になった瞬間に動き出す、まさにその境目ですね。

他にも、こんな例を考えてみましょう。

音のしきい値人間が「音」として認識できる最小の音量。これより小さい音は聞こえません。
光のしきい値カメラが「暗い」と判断して、フラッシュをたいたり、シャッタースピードを遅くしたりする明るさの基準。 (※)
コンピュータのしきい値パソコンのメモリー使用率が「90%を超えたら、動作が遅くなる可能性があるから警告を出す」というときの「90%」。 (※) 迷惑メールを振り分ける際に、「怪しさの度合いがこの点数を超えたら迷惑メールフォルダーへ」という「点数」。 (※)

※このようなしきい値は、一般的にプログラミングによって処理されています。

このように、しきい値は「AかBか」「ONかOFFか」「正常か異常か」といった判断を自動で行うために使われる、非常に便利な「目印」なのです。

なぜ、しきい値が必要なの?

しきい値がなぜそんなに重要なのでしょうか?大きく3つの理由があります。

効率化と自動化何かを常に人が監視して判断するのは大変です。しきい値を設定することで、「この基準を超えたら自動的にこうする」というように、システムが自分で判断し、動いてくれるようになります。
異常の検知と安全確保工場での機械の温度や圧力、ITシステムのサーバーの負荷など、異常が起きる前に危険な状態を知らせるために使われます。これにより、事故や故障を未然に防ぐことができます。
目標設定と管理ビジネスの場でも使われます。「売上がこの額を超えたら目標達成」「問い合わせがこの数を超えたら人員を増やす検討」など、具体的な目標や管理の基準として機能します。

私たちの生活とITにおけるしきい値

日常生活では意識しないかもしれませんが、私たちが便利に使っているITサービスや製品の多くには、しきい値が活用されています。

スマホの通知バッテリー残量が「20%を下回ったら」通知。
AIスピーカの音声認識「〇〇(ウェイクワード)という音のパターンが、ある確度を超えたら」起動。
Webサイトの負荷分散サーバーへのアクセス数が「この量を超えたら」、別のサーバーに処理を振り分ける。
セキュリティシステム不審なログイン試行が「5回連続で失敗したら」アカウントをロックする。

これらはすべて、ある「しきい値」を設けて、それに基づいてシステムが自動的に判断し、適切な処理を行っている例です。

まとめ

「しきい値」は、一見難しそうな言葉ですが、要するに「何かを判断したり、行動を起こしたりするための基準となる境界線や数値」のことです。

私たちの身の回りや、私たちが当たり前のように使っているIT技術の中には、この「しきい値」が数多く存在し、私たちの生活をより便利に、安全にするために、目に見えないところで活躍しているのです。

この「読み物」で、少しでも「しきい値」の正体がわかっていただけたら嬉しいです!