聞こえない騒音 ノイズにご注意

先日、作業現場でとある製品の評価を行っていた際の出来事です。
オシロスコープで波形を観測していたところ、突如として波形が激しく乱れ始めたため、慌てて評価中の製品の電源を切って様子を見ました。
しかし、私が使用していたすべての機器を停止しても、波形の乱れは一向に収まりません。結果として、原因は隣の作業環境から発生していたノイズであり、それをオシロスコープが拾っていたことが判明しました。

周囲に話を聞いたところ、PCモニターの映像が乱れるなど、他にも影響が出ていたようで、「自分のせいじゃなかった」と安心する一方で、「驚かせないでくれ」と冷や汗ものでした。技術者にとっては、あまり心臓に良くない体験だったと思います。

一般的な“騒音(NOISE)”の場合は、音として認識されるため、当事者の配慮によりある程度の対策が可能です。また、工事などのようにある程度の音が想定されている場合には、事前に周囲と協力・理解を得ることでトラブルを防ぐこともできます。

しかし、我々パワエレ業界におけるノイズの場合、(音が出ることもありますが)多くは音として聞こえず、時には想定外の場所から発生していることもあるため、知らぬ間に自分の機器だけでなく周囲にも迷惑をかけている可能性があります。

もちろん、評価中の機器など、どうしてもノイズを避けられない状況があるのも現実です。ですが、そうした場合でも「ノイズは出るもの」と仮定したうえで、あらかじめ周囲への配慮や対処を講じておくことが重要です。

対策のひとつとしては、作業環境をできる限り隔離(絶縁)することです。
可能であれば、電源系統を他と分けたり、シールド性の高い部屋で作業を行うといった方法が、周囲へのノイズ影響を防ぐうえで非常に有効です。とはいえ、そのような環境を整えるのが難しい場合もあるでしょう。

その場合は、少しでもノイズの影響を受けにくい環境づくりを心がけることも大切です。各機器にアース線を適切に接続してノイズを逃がす経路を確保することや、オシロスコープのようなノイズの影響を受けやすい機器には、接続ケーブルにフェライトコアなどを装着することも効果的です。

音が出ていようがいまいが、ノイズはさまざまな場面で思わぬトラブルを引き起こす厄介者です。しかし、ちょっとした気づきや配慮が、今の作業環境をより快適に、そして安全にすることにつながるかもしれませんね。

執筆者:F.M