製品開発振り返り 
特注CVCFのEMC対策

EMC試験と苦手意識

ある特注開発でCVCF(交流電源装置)を開発したときのことです。要求事項の一つにEMC試験があり、特にEMI(電磁波干渉)に対しての規格適合が求められていました。EMCという言葉を聞くと、なんとなく苦手意識を持ってしまう電気設計エンジニアは多いのではないでしょうか?かくいう私もその一人です。

大きく超えた規格値とその代償

実際に試作装置が完成しEMC試験を実施したところ、規格値を大きく超える結果となってしまいました。こうなると、その後の対応が非常に大変です。試験結果が多少規格値を超える程度であれば、EMCコアを入れたり、XコンYコンを入れたりと微調整で対処できる場合もあります。しかし今回のように実測値と規格値がかけ離れているような結果だと、付け焼刃の対策ではどうにもなりません。つまり、EMCの規格適合可否は、設計構想から詳細設計までの段階で決まっていると言っても過言ではありません。

今回の失敗はコストや納期、製造面を優先し、EMCに関しては設計段階で多少妥協をしてしまったことが原因でした。その判断が結果的にEMC対策に予定外のコストと時間を費やすこととなってしまいました。実際の製品開発では、「コストはいくら掛けても良いからEMC対策は完璧に設計する!」というわけにはいきません。その意味では矛盾するかもしれませんが、前述の「多少の妥協」のさじ加減をどうするかがエンジニアリングの最も重要な要素だと思います。

EMC対策は設計段階で決まる

ただ一つ言えることは、EMC対策は試作製品が完成してからでは、できることには限界があるということです。私の実感としては、「ほとんど何もできない」と言っても過言ではありません。

今回も取り留めのない話になってしまいましたが、以前のコラム「ChatGPTに聞いた!製品開発で想定を超えてしまう工程トップ5」でも書いた通り、「問題・不具合の原因究明」「製品の検証・評価」は想定以上の工数になる可能性が非常に高いです。その工数を最小限に抑えるためには「初期設計・概念設計」の段階で、どれだけ精度の高い設計ができるかが重要です。そして、それを実現する手段として、デザインレビューなどの仕組みを積極的に活用することが非常に効果的です。

まとめ

今回のまとめとしてお伝えしたいのは、「EMC対策は、設計段階で基本に忠実な回路設計・基板アートワーク・機構設計を行うことが、最も確実な近道である」ということです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。それでは、また次回のコラムでお会いしましょう。

執筆者:F.M